衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

叶わぬ欲望を胸に死期を待つ人『性の報告書 ある死刑囚の性歴』

古書は買えるときに買わないと…というのを痛感。

性の報告書 ある死刑囚の性歴 (河出i文庫)

性の報告書 ある死刑囚の性歴 (河出i文庫)

 

読了。

ゲイの死刑囚の手記。戦争孤児になり、悪党に男色を仕込まれ、その後は娑婆とムショを行ったり来たりの短くも濃い人生が描かれている。

死刑囚の手記を手に入れて本にしたという事で発行されているけど、本当の所はどうなんだろ?

このゲイの死刑囚・路村三郎が少年時代に密輸船に売られる話があるのだけど、その時に一緒に売られた少女が海外で売るために目を潰されて歯を抜かれて盲妹に改造される描写があるので、猟奇趣味の人はこの本のタイトルは知っていそう。

この本自体は鹿島茂の本で知ったはず…長らく読みたかったのだけど、過激そうな内容に躊躇しているうちに古書で値段が高騰してしまい、図書館になく、やっと古書で値段が下がったので手に入れた次第です。

期待していた分の元は取れたかな…人に利用されるだけで生きてきたが死が決まった時に娑婆の人間を観て「また美しく装って歩きたい」という生きたい気持ちが目覚めるもそれが叶わぬ終わり方は切ないです。

少女の頃は過ぎましたが『文學少女の友』『忌中』

これもまた長年読みたかった本。

文學少女の友

文學少女の友

読了。
文学少女を軸にした文芸エッセイ。
私は妙齢で少女期にそれほど本を読んでいなかった気がするので未来も過去も今も文学少女では無いけど、自分の趣味嗜好を再確認できた。

「耽美と人形」の項目があり、少女×人形については比較的網羅していたものの、少年人形に関しては…私はそこはあまり興味を持たなかった分野だったのだなぁ…となるなど。
少年にそれほど興味はないものの、室生犀星稲垣足穂に対して「美少年は君、ホータイをするものだよ」と云ったエピソードに関しては、高畠華宵を履修しているので「わかる…」となりました。

話戻って人形。
人形が出てくる小説としてはあまり取り上げられない印象の「神の花嫁」(『忌中』収録)が取り上げられていたのが印象的でした。
『文學少女の友』自体は10年ほど前の発売当初から気になっていたものの読まずに来てしまったのだけど、人形に関してはこの本をなぞるような読書をしていたのだなぁ…。

忌中 (文春文庫)

忌中 (文春文庫)

強姦殺人、姉の夫と不倫、一家心中、妻と心中し損ねた男(表題作)など、どんよりする話ばかりの短編集。
思いを寄せていた女性が結婚した途端に「男を知った顔」などとぬかす男が最後に球体関節人形を購入し女性の名前を付けて可愛がる『神の花嫁』は読んだ当時はちょっと掘り出し物感がありました。

「人形はあらかじめ死者である。人間はこれから死んで、腐敗するか、灰と骨になるかである。そこに人形の色気がある」
車谷長吉「神の花嫁」

…最近の私は人形と死体を結びつける考え方は好かないのですが、人形はその手の趣味嗜好とも親和性があるのはわかっておりますよ。

あんたが一番変態『死支度』

噂にも聞いていなかった本が変態的だった。

死支度 (講談社文庫)

死支度 (講談社文庫)

 

読了。

女性の陰毛と脇毛が詰まった枕と掛け布団を愛用する自称109歳の老人が語り見聞きする性の話。義足、寝取られ、盲獣プレイ、ふたなり…なかなか多岐に渡り、主人公の爺さんが陰毛と脇毛を集める話も「こんな変態いそう」感がすごい。

インターネットや風俗で集めるなどせず新聞広告やポスティングでっていうアナログ感が特に。

枕と髪の毛の話が変態的なので、知る人ぞ知る…かと思いきや読書メーターでまったく感想がなく、登録も一桁。Amazonのレビューはありましたが、あんまり知られていないのかしら…ちなみに私はALL REVIEWSで知りました。

少女に閉じ込めて『その女アレックス』

何年も読めずじまいだった本を読みました。

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

 

読了。

拉致監禁から始まる連続殺人事件。構成と陰惨さの両立が読み物として魅力的。日本での出版は『この女アレックス』が最初ですが時系列は『悲しみのイレーヌ』→『その女アレックス』なので、満を持して読みました。そして期待に応えてくれるのは嬉しいね。

構成や展開が面白いので、あんまり詳しく感想が書けないのですが、話も絵面も大越孝太郎沙村広明を足したようなヴィジュアルで想像していました。

 

余談

監禁に使った檻に対して若い刑事が拷問檻の「『少女(フィエット)』を作るなんて凝っているし犯人にしては高尚」と評したところ主人公が「お前に学があるからそう見えるだけで、犯人は檻を作ったら小さくなっただけだろう」というやり取りが印象的でした。実際に高尚ではなく別の理由が用意されていました。

そして拷問檻の「少女(フィエット)」に関して検索しようとすると『その女アレックス』しか出てこない…別の名前なのかな。

フィクションから現実への置換『悲しみのイレーヌ』

3月は31冊読めました。計算上は1日1冊という感じでしょうか。

今月最後に読んだ本が読みごたえがあったので嬉しい。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

 

読了。

陰惨なバラバラ殺人事件から発覚する連続殺人事件。フィクションからの見立て殺人であることが発覚するので、本がキーワードになっている。

最初の事件がエグい惨状なこともあり「まずは殺す、適度な間隔で殺す…」というロジャー・コーマンの教えって汎用性あるよね…という間違った感想を思った。

キーになる本を出していた出版社が1985年倒産したこともありホームページがないため、古書店の在庫目録から情報を集めて…というエピソードが出てくるけど「ファンサイトぐらいあるだろ」「国会図書館」「ウィキペディア」「日本の古本屋さん」「メジャーなジャンルなんだから私設図書館とかないの?」と完全に日本の事情を引き合いに考えてしまった。フランスだとまた事情が違うのかしら?ただ、一定以上古いとネットで情報が無いのも傾向としてはあるよね。

数少ない裏切らぬ努力のこと『わたしの外国語学習法』

語学に疎い私だけれども。

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)

 

読了。

16ヶ国語を習得したハンガリー人翻訳者によるエッセイ。

コツはあるものの、語学は毎日続けるのが大事というのがある一方で、著者が語学堪能だった訳ではないという事から継続と努力をすればなんとかなる気持ちになる。

覚えておきたいことがあるので、10の教訓、アドバイスを一部引用。

 

Ⅰ外国語は毎日学習すること。もしまったく時間がないというなら最低10分はやること。特に朝学習するのが良い。

Ⅱ学習意欲が余りにも早く減退するような場合は、自分を≪鞭打っ≫たりしないこと、かといって、学習は捨てぬこと。別の事を考えるのです。本をひとまず置いて、ラジオを聴くとか、教科書の練習問題を止めて、辞書をパラパラとめくってみるとか。

Ⅲ何ものも隔離された形で、つまり文脈から引き離して覚えこまないこと。

(略)

Ⅸしゃべるのを恐れぬこと。誤りを犯すことを恐れず、それを直してくれるように頼むこと。そして、実際に誤りを指摘されたら、がっかりしたり、いじけたりしないこと。

 

 …学生時代の私に教えてあげたかった。中学・高校の英語の授業とか憂鬱でしたけどね。

不衛生だった時代がありまして『貧民の帝都』

明日というほどではないけど、我が身を思う。

貧民の帝都 (文春新書)

貧民の帝都 (文春新書)

 

読了。

明治以降の貧民とその対応の歴史について。

東京がこんなに不衛生で死体だらけの時代があり「今のだいたいこのあたり」みたいな説明なので、余計にマジか…という気持ちになる。

地方出身の貧民は故郷に帰されるなどリアル跳んで埼玉だった(埼玉に限らないけど)。

海外の目もあるから汚いものは見せないという事で追いやられた人は養育院に行くのだけど、戦争で焼かれて養育院を復興しようとしたら近隣住民の反対に遭うなど、どこかで聞いたような話が出て来る。

 

本書で貧民を何とかしようとした人物として渋沢栄一が出てくるけれども…貧困も金持ち実業家では解決するのは難しかったし、国に明け渡した話もあるので、国策でなんとかなってほしい気持ちになる。

しかし、ホームレスが寝転がれないように座れない椅子を設置して追い出した話などもあり、公的な部分でも難しいし、関わり合いたくないのもわからなくもない。

さて、今は貧困の末はどうなるんだろ…と無職だから恐怖して終わった。んー、本当にどうしよう…。

 

余談

売春しようとしても売れなくて柳の木の下で野犬に吠えられてうずくまっている娼婦の話があって、売春もしたことがないのに胸に来る。

貧困と売春に関しては貧困を救おうとするのは可愛げがない人とかかわること、という話を読んだことがある。貧困の問題…なんでも人任せにしてはいけない一方、餅は餅屋という言葉もあるので、プロに任せたい気持ちもある。プロ…この道のプロってなんなのだろう?

 

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