衛生ゴアグラインド

人形を愛で、本を読み、肉を食べる

地域社会と繋がる『セルフ・ネグレクトの人への支援』

本を読んでいると、すぐではないが疑問が解決することがある。

セルフ・ネグレクトの人への支援

セルフ・ネグレクトの人への支援

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 中央法規出版
  • 発売日: 2015/07/25
  • メディア: 単行本
 

読了。

教科書的な話や汎用性がありそうなQ&A、そして、事例集。セルフ・ネグレクトもやはり社会との繋がりが無くなってしまうことや拒否すること、また元々縁が薄い事で起きるよなぁ…という気持ち。医者にはかかろう、人には相談しよう。

 

この本を読んでいて、収穫だなぁ…と思ったのは「電波が入ってくるから」という理由で部屋中アルミホイルの人への接し方が載っていること。しかも汎用性が高そうなQ&Aのページにあるので、よくある案件なのかしら。

ちなみに部屋中アルミホイルの人との接し方は、友人が疑問に思っていたことだったので、即友人に伝えました。

事例集が春日武彦平山夢明の本に出てきそうな話が多く、鳩が出入りする不衛生な家に住む高齢者夫婦(夫は躁鬱、妻は謎の宗教狂い)が家が火事になった結果解決したとか、本文には出てこないけど図をみると遺体を放置してしまった高齢者、ずっと焼酎のコーヒー牛乳割を飲んでいる高齢女性、こだわりが強すぎて病院に行けず症状を悪化させる中年女性など「もっと人を頼っていいし、意固地にならなくてもいいし、何が不安かはちゃんと言ったほうがいい」という気持ちになる。

 

また、こうしたセルフ・ネグレクトの方への接し方は嫌がらず根気強く、敬意を持って接するに他ならないな…となるし、やはり専門家に任せないといけない案件でもあり、手遅れになる前にもっと人を頼っていいし、意固地にならなくてもいいし、何が不安かはちゃんと言ったほうがいいし、そして、小さくでもいいから社会とつながったほうがいい。

最強の18人+α『マゾヒストたち』

世の中にはすごい人たちがいるもんです。

マゾヒストたち: 究極の変態18人の肖像 (新潮文庫)

マゾヒストたち: 究極の変態18人の肖像 (新潮文庫)

  • 作者:松沢 呉一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/27
  • メディア: 文庫
 

読了。

M男さんたちへのインタビュー集。SM雑誌での連載だったそうですが、新潮文庫から出ている本なのですが、こういう所から出してくれるの、いいですねー。

M男歴が長すぎて乳首も長くなったM男さん、馬になるM男さん、監禁されるために失踪、金玉蹴りされる方のマニア、尿が好き、食糞…など、ハードなフェチシズムをお持ちの方が多く、他にもそれは聞いたことが無い、今知りました…な話も多し。ちょっと踏まれたい、痛いのが好きぐらいだとMとしてレベルが低いんじゃないかと思うくらいレベルが高い、日本でも最強(?)のM男さんが揃っています。今後読む小説の変態描写の甘さにさらに激怒できるようになりますね…*1

 

目次を見て「会ったことがあるM男さんが一人いるなー」と思って読み進めたら、もう一人知っている人がいました。どちらもお元気かしら?ちなみにお会いしたことがあるM男さんですが、一人がフェティッシュバーで出会った乳首が発達したM男さん、もう一人は行きつけのご飯屋さんで出会いました。たまに誤解されるけど、私はSMの人ではないです。

ご飯屋さんで会ったM男さんは、盲目のM男さんで、私が作ったザッハトルテを食べて「可愛い女子とフルーツは鉄板ですよ!」と大喜びしてくれたそうです(その場には私はいなかったので、また聞き)。

ご飯屋さんでたまーにお目にかかる程度なので盲目のM男さんがピアノが弾けて留学経験もあるのは初めて知りました。この本を読んだ後に行きつけのご飯屋さんに行って店長に「あの方、すごい人なんですね…」と云ったら「読み上げ機能があれば将棋もできるよ」とまた新たな情報を頂きました。このインタビュー集、基本は10~15年ほど前なので、どのM男さんも元気か気になったのですが、盲目のM男さんに関してはプライベートも充実されているという話を聞いたので何よりです。

 

インタビュー以外にもコラムがあるのですが、そこでインパクトがあったのは中国人のM男さんの話。希望したプレイが731部隊の女兵士に人体実験されるプレイだったとあり、大変複雑な気持ちになったのですが、当の女王様も複雑だったご様子だった。女王様は「旧日本軍に女兵士はいない」と説明したそうですが…結局、マルタプレイはしたとのことでした。

*1:ある小説でうんこ食わせる描写に対して「うんこを食べるのにはコツがいるって聞いたのに、何平然と食わせているんだよ」とわけわからない怒り方をしたことがある。と、いうのは過去に友人(食糞経験あり)が「食べている最中にむせると臭い」と教えてくれたり、『消された一家』ではトイレットペーパーにくるんで飲み込む…という描写があったことから。この『マゾヒストたち』には、食糞のコツが書かれているので、くさい思いをせずに知識を得ることが出来ます。食べるというよりは飲み込むそうで、噛むと臭いから…ということだそうです。そしてM男さんは噛まずに飲み込むという技術を取得する練習をしたとのことですが…人生で使わずにすませたい知識は増えていくのだな…という気持ちになりました。

生きて帰れども『特攻隊振武寮』

過去の本と親子や兄弟に当たる本を読みました。

特攻隊振武寮 帰還兵は地獄を見た (朝日文庫)

特攻隊振武寮 帰還兵は地獄を見た (朝日文庫)

 

読了。

生きて帰ってきた特攻兵を待ち受けていたのは上官の心ない言葉と振武寮での軟禁生活!飯喰ってても詰られる様子がとても辛い…。

 

軟禁生活の話が大きなところではあるけれども、当然、軟禁に至るまでの話も多く、同じような学歴(ほぼ皆大学を出ている)の仲間たちとの交流や特技を活かす場面など、戦争の世でなければ…と思わずにはいられない和気藹々、希望があったはずだったのに…という部分多し。

飛行って技術だから、訓練中に死者が出ることがあって、同級生がお亡くなりになってしまった…というエピソードもあり、飛び散ったご遺体を素手で集めたり(手袋は飛行のためだから使っちゃダメって上官に云われる)、仏教系の学校を出た同級生がお経を上げてくれたりという話が妙にしんみりきた。

飛び散った臓器の話しから、臓器の中で丈夫なのは腸で、叩きつけられてもそのままの形で残っていたという話もしてくれて、「ホラー映画などで腸でアレコレするのは案外理に適っているのだな…」と変な方向の事も考えていました。

 

軟禁生活でネチネチ詰ってきた上官を呼び出して囲んで殴ろうかと戦後に呼び出して囲むもあんな鬼みたいな奴がこんなに弱って…とまるで無限の住人における槇絵と父みたいな話もあった。復讐って案外できないのはそんなこともあるんだと思います、たぶん。

 

この本は『不死身の特攻兵』から読んだのだけど、文庫本だったので、解説が鴻上さんだった。親子や兄弟みたいな本なのでこの人選はさすがです。

今回の本も鴻上さんの本も特攻の構図は鴻上さんがよくいう「世間と空気」みたいな話につながる部分は多く、「強要はしていないが、そうせざるを得ない」に追い込まれます。

罰せられない上官も多く、上司がダメなばっかりに現場の人間ばかりが損をする、そういう構図はなくしていきたいですね。

 

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蝶の夢も見たかもしれない『森の死神』

これは掘り出し物。

森の死神 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 213-2))

森の死神 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 213-2))

 

読了。

全身麻痺で口が聞けず目が見えない主人公と彼女が住む町で起こる子供を狙った連続殺人事件。

設定からして、期待しますよね、期待はそれなりに叶えられます…という具合。

主人公がお嬢様で、ばあやがいるんですけど、ばあやはお嬢様を人間扱いしてくれるし、出会った男性と恋に落ちて仲良くなる。主人公も主人公で、セックスは諦めたけどもっと動けたら筆談ができるから、えっちな話ができるぞ!と前向き。フランスって恋愛と性に前向きな国だと勝手に思っていたけど、だいたい合っている…?

お嬢様の一人称ということもあり、病気は違うけど、殺人があって目が見えない『潜水服は蝶の夢を見る』みたいなそんな作品。あと逆『ドント・ブリーズ』かな。

あと、連続殺人事件といえば…ということで、名前は出て来ないけど、ジェフリー・ダーマーの事だなって台詞があった。猟奇殺人と云えば、この人!みたいな人だなぁ…となりました。

攻撃性は高いが品性は低い『あむんぜん』

本に応援されたくもないし、感動もしたくないけど、思いがけなくしんみりしちゃうのは悪くない。

あむんぜん

あむんぜん

 

読了。

短編集。表題作「あむんぜん」は脳味噌をつつくと超能力が使える少年の話。

ページ開いて一発目がサラリーマンがチンパンジーにレイプされる「GangBang The Chimpanzee」で、いきなり読者をふるいにかけてくる。その後も借金返済のためにスカト□ビデオに出演させられる女、意外な方法で薬を抽出させられる男、驚愕の方法で事件を解決する女、ヤベェ奴しかないドルオタ…と盛りだくさん!

攻撃性は高く、品性は低い…だが、それがいい!だって、平山夢明だもの。

Google口コミで「ご飯屋さんなのに、こんなに不衛生なのはありえない!☆1つも付けたくない!」と云われるか「すごく癖があるお店ですし、料理も癖があるけど、大好きです!自分にとって美味しい店の1つ!」と絶賛されるかのどっちかみたいなキタナシュラン系の飲食店みたいな作家だと思っています。

ただ、今回のは徹底して不衛生なので、好きと云いがたいが、読んだ人がいれば無言でニヤッと笑ってすれ違いたいそんな感じ。 トークイベントで、出版社のお偉いさんが「何でこんな下品な本をうちの出版社から出さないといけないんだ」と云ったそうだけど、そうですね…信憑性ばっちりですね…。

カニバリズムから始める人類学『人喰い』

タイトルで惹かれて読んで収穫がそれ以上にあると嬉しいですね。

人喰い (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズIII-8)

人喰い (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズIII-8)

 

読了。

インドネシアで原住民に食べられた(!)とされるマイケル・ロックフェラー失踪事件のドキュメンタリー。

米国人が文化に魅せられたり、事件の取材でインドネシアにやってくるのはロックフェラーも著者も同じ。ただ、そこにどの程度相手への敬意があるかの違いが時代の違い以前に大事な気持ちになる。著者は現地での取材の数か月後にインドネシアの言葉を学んだうえで1ヵ月ホームステイをするのだけど、その中で現地の食べものを食べて、カミキリムシの幼虫(現地では重要な食品)を食べて、現地で好まれる理由を知るという経験をしている。ロックフェラーはプリミティブアートと称して色々買っていたり、土産物用じゃなくてだな…と本物嗜好があったようだけど、その中で敬意はあったのかな…という疑問が生まれるなどした。

 

タイトルに『人喰い』とあるので、カニバリズムの話がメインかと思いきや、現地での取材と再現映像的な文章が交互に書かれ、ホームステイの部分などは文化人類学におけるフィールドワークになっている。

フィールドワークの中でモンド趣味ではないものを身に付けていく様子があり、これってドキュメンタリーにおける醍醐味なのかな?となるなど。

勝手に同じカテゴリーにしているドニー・アイカー『死に山』も米国人とロシア人の交流の話になっている部分も多かったのよね。 他にも取材をしても「その言葉が信用できるか」という問題が共通している。『死に山』では陰謀論に染まっていて、ダメだコリャになったのに対して『人喰い』では文化的な理由「いってはいけない」に阻まれたり、こっちが望むような話をしてしまったり、という理由の違いはあるのだけど。

 

そして『人喰い』の監修をしたのは『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』の奥野克己。他にも本文で『銃・鉄・病原菌』がちらっと出ていて、思い掛けなく予習の上で読めました。予習というほどではないけど、過去に読んだ本と繋がるのは嬉しいですね。

 

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おまけ

カニバリズムについてはそれほどあるわけではないのだけど、取材の結果書かれた再現解体のパートがある。まずは心臓に槍を突き刺し、頭を叩き、首を落とす。解体は肛門から首まで切り裂き、胴体の片側→わきの下→鎖骨を通って喉で反対側も同じく。肋骨をたたき割って、中から押し広げる…とあるので、開きみたいにするのかな。

その後、手足を落として内臓も引っ張り出すとのこと。

著者が現地でカミキリムシの幼虫を食べたときの事を豊かな味と脂肪の体液が迸った…とあり、カニバリズムもまた貴重な食品だったような気持になるのはつなげすぎかしら…。

 

殺すことは主張すること、所有すること、奪うことだ。

どこにもつなげられなかったので、こちらは単独でポツンと引用しておきます。忘れないために。

見えるプロパガンダ『独裁者のデザイン』

このところ楽しい読書続き。

独裁者のデザイン: ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法

独裁者のデザイン: ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法

 

読了。

プロパガンダのデザイン、主にポスターなどについての解説。

人物の目線や構図で章分けされていてナチスが多いのと毛沢東が目立つ。 憎しみの表現は識字率や知性とは関係なさそうだ、とさらっと書いているけど、確かにテンプレでもあるのかよ!ってほど同じだものね。

ただ、同じ事を繰り返していくのもプロパガンダではあるのだけど。

如何に反対派を陥れるかの作戦についてもさらっと書かれているけど、子供を使う、睡眠時間を削る、本を読まない奴等を信者にして本を読むのはプチブルだと思わせるなど、うわぁ…となる。

 

文化大革命時の写真がいくつかあったのですが、余華『兄弟』に出て来たあれか…となった。過去に読んだ本と思いがけなくリンクすると楽しいね。だから私は読書が好き。