衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

復讐の食人鬼『ハンニバル・ライジング』

上下巻なのでひるんでいましたが、無事読めましたし、楽しかったです。

ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)

ハンニバル・ライジング 上巻 (新潮文庫)

 
ハンニバル・ライジング 下巻 (新潮文庫)

ハンニバル・ライジング 下巻 (新潮文庫)

 

読了。

ハンニバル・レクターの少年時代。

戦火を避けて家族で避難した先でリトアニアの対独協力者たちに捕らえられ、酷い目に遭うも日本人の叔母:紫夫人に引き取られた後がドラマチック。

紫夫人はちょっとファンタスティックな日本人になっていてフフッとなるのですが、侮辱されたら刃物を取ってブレイモノ!と返すなどトマス・ハリスが考えた最強の日本美女になっているのでカッコいい!なんて思ってしまいます。

少年ハンニバルの最初の殺人は後にクラリスを侮辱した囚人を言葉責めして殺しちゃう姿と重なる行動があって、「やっぱりこの人はハンニバル・レクターだ!」となりますね。

少年ハンニバル、下巻では復讐の鬼と化し妹を食べた連中を容赦なく血祭りにしていくのですが、殺し方も残虐凝っていていい感じです。

トマス・ハリスの過去作品同様、無惨さとエンターテイメント性の高さは相変わらずで、解説にもある「読む喜び」に溢れている。無惨なだけじゃダメなんだよ…とワガママに育った心が満たされました。

 

獣になりたい、ロボットになりたいかはわからない『カファルド』

読みたかった本を古書で手に入れて読みました。

カファルド―小説 (1976年)

カファルド―小説 (1976年)

 

読了。

異国から来た女性の独白。場所も時間も飛び越え、人間ではない異形の存在になるという様子は読むシュールレアリスムということなのかしら。

4年ほど前に中川多理さんが人形の題材にされていたことがきっかけで知って、やっと読みました。

 

夜想#中川多理: 物語の中の少女

夜想#中川多理: 物語の中の少女

 

カファルド人形はこちらに収録。

狼耳で目がオッドアイ風で可愛いんです。

あなた自身はダメじゃないよ『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』

タイトルが挑発的だけど、気になっていた本を読みました。

ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室

ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室

 

読了。

アラフォーにして名門料理学校を出た遅咲きの料理人が教える調理方法と食育。

生徒は決してダメなわけではなく料理が出来ないと思い込んでいるだけの女性たち。

少しのコツで料理上手になったり、食について考えるようになることで自信を付けていく様子がとても良い。

アメリカの話なので丸鶏一羽さばいたほうがオトク♡は日本では実行しにくいけど、ズッキーニのパスタや外食を控えて自炊することによりカロリーや塩分を取りすぎない!はできるので、自身の食について考えるのもいいなと思う。

 

「あなた自身はダメじゃ無いよ。こういう風にやればいいんだよ」と良い方向に背中を押してくれる話は料理に限らず、このところの流れなんだろうけど(未見ながら、クィア・アイがそうよね?)、良い流れだとは思っている。

いきなり「あなたは素晴らしい」だと胡散臭いし疲れちゃうけど、あなた自身はダメじゃないよ、こういうやり方もあるよって伝え方は好きだし、希望が持てる人が多いんじゃなかろうか。

オーストラリアンサスペリア『ピクニック・アット・ハンギングロック』

映画を観る前に小説を読みました。

ピクニック・アット・ハンギングロック (創元推理文庫)

ピクニック・アット・ハンギングロック (創元推理文庫)

 

読了。

女子生徒がハンギングロックに行ったら行方不明に!…というのは序盤の話で、あとは周囲の人々と学院の崩壊の描写が続く。その様子にページをめくる手が止まらない。

あとがきで削除された章にも触れているけど、これは編集者の手が入ったことによりいい作品になった例かと。何も解決しない、謎は謎のままだからいいまとまりになったと思う。

 

映画はまだ観ていないのだけど、絶対に素敵だろうなぁ。白いモスリンのドレスの女子がいっぱい出て来るし。

ちなみに映画の方はこの作品をみた人はこんな作品も観ています…に『サスペリア』が出て来るとのこと。

少女の死が明確に書かれるのは1件だけとはいえ、確かにサスペリア感はある。魔女がいなくて、死人も少なくして、ショッキングさと画面が赤くないサスペリア

勝手にサスペリアと関連付けてしまいましたが、サスペリアと勝手に関連づけられている作品に『エコール』がある。元はエコールの監督の誤認(原作がサスペリアと一緒だと思っていた)によるものだけど、寄宿舎で、なんかロマンティックな格好の女子たちがわらわらいるという点では『サスペリア』『エコール』『ピクニック・アット・ハンギングロック』は似ている気がしなくもない。

昨日のサスペリア読本に『エコール』と『ミネハハ』(ともに原作は『ミネハハ』)の記載があったので、ここで繋げてきたか…となりました。

 

個人的に少女ネタ×バレエダンスは食傷していて苦手なので、美少女がわらわら出てくるけれどもバレエダンスが出てこないという点で『ピクニック・アット・ハンギングロック』は個人的な評価が高いです。はやく映画の方も観たい。

ウォッカのためならなんでもするぜ『ロシアは今日も荒れ模様』

仕事とかかわっている時間が長くて本を読むスピードが遅い時は楽しい本を選びたいですね。

ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)

ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)

 

読了。

ロシア語通訳者によるロシアとロシア人についてのエッセイ。酒を飲まなきゃいい人だけど、酒を飲まなかったらこの人じゃあない…と思うほど酒の話が多い。

お酒飲んで酔っ払っちゃったからクーデター失敗しちゃった!エリツィンが酒を飲みながら酒の話をする様子にロシア人ってやっぱり飲兵衛さんなんだな…となるなど。

時代にもよるけど、国として不味い発言は精神病院送りにされる一方、お酒の罪はちょっと刑務所に入る程度で済むなど酒…酒の罪…軽いの…となるなど。

政治家だとゴルバチョフエリツィンの話が多く、ギリギリリアルタイムで知っているので、「こういう人だったのか、へー」という気持ちになる部分も。

 

各章の終わりにコラムがあるのだけど、その中でソビエト時代でも貴族階級出身の作家によるロシア文学を教えていた話が出てくる。同時代で所見がある作家は粛清対象になってしまったので、古典を教えたほうが無難という話が出てきたのに対し、格差がある社会の方が文化が生まれるという鹿島茂の話を思い出すなどしました。

一方で食べものの話では、ロシアに関する映画を観てそこでみた塩をかけたジャガイモやペリメニを実際に作って食べる話が良かった。素朴な品で作品において食べ物が主題でなくてさりげなく出てくるものほど食べたくなる…ということだそうなのだけど、この指摘は確かにね!という気持ち。

少し前のロシアの事が楽しく知れて、ところどころで感情をかき回される心地よい読書でした。

節分、鬼あそび

読書の話題が多くなってきたこのブログですが、お人形ブログを目指していたんですよね…実は。

というわけで、りーぬが久しぶりに登場です。

 

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節分なので、鬼のお面をつけました。

チェーンソーを持たせたので、間違ったなまはげみたいになっています。

 

最近、読者登録が増えたので、改めて紹介すると、青いワンピースのお人形がマルスリーヌ(通称:りーぬ)、りーぬの膝にいる小さい人形がレレチカ、豆の袋に興味津々なのがイノサンです。

マルスリーヌはマンディアルグ「仔羊の血」のヒロインを元ネタにした人形で、レレチカは名前の由来がソログープ「かくれんぼ」でどちらも人形作家の中川多理さん作。

イノサンは中川多理さんのワークショップで組み立てた人形です。

 

最初の頃に書いたもっと詳しい説明

hikimusubi.hatenablog.com

淫乱悪徳の果て『血みどろ臓物ハイスクール』

読みたかった本を読んだので、その記録。

読了。

『血みどろ臓物ハイスクール』ってタイトルが最高だけど、切株大収穫の内臓大爆発ではなく、ローティーンにして父親ともヤるクソビッチ・ジェイニーの物語。

どこのページを開いても低俗な言葉が並ぶし、戯曲、詩、イラストなど様々な技法を取り入れている様子に作者が表現の手段に文字を選んだ感。

久々に変なの読んじゃったなぁ…。

元は夜想の少女特集で知った本だけど、文庫で復刊されたので、やっと読めた。

ロシアの作家:ソローキンを思い出したけど、『血みどろ臓物~』のキャシー・アッカーはパンクの人なので、読むパンクってこんな感じかな?と思うなど。

あとパンク少女が寺山修司をやったらこうなりそう、という感想も持ちました。

 

yaso夜想―特集『少女』Filles

yaso夜想―特集『少女』Filles

 

 千野帽子「ガーリッシュ黒『黒い文學少女』のためのうぬぼれ鏡」に『血みどろ臓物~』が紹介されていました。

それを確認するために夜想を久しぶりに開きましたが、文学作品に比重を置いていて、そして宇野亞喜良へのインタビューもあって、この号やっぱり面白いな…となるなど。