衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

羞恥心の遍歴『パンツが見える。』

感想を書くつもりはなかったけど、思わぬところで引っかかったので。

パンツが見える。: 羞恥心の現代史 (新潮文庫)

パンツが見える。: 羞恥心の現代史 (新潮文庫)

 

読了。

今はもうデマが通説になった?戦前の白木屋火災が日本人女性がパンツをはくきっかけだった説の検証や、文学作品、雑誌、新聞記事から女性の下着(主にパンツ)と羞恥心を探っている仕事ぶりに「学生の時に出会いたかった」と思うなど(元服飾系の学生)。

パンチラに興味を持った文筆家は野坂昭如だそうですが、その中で谷崎潤一郎がパンチラについて書いていないのを意外そうにしている文章があった。

…谷崎は脚フェチどMおじさんだから、別にパンツに興味はないのでは?変態って云うのはすごくこだわりがありすぎてこじらせているから、足先から胴体に向かっていく過程でパンツを装着しているからと云って、脚フェチどMおじさんの中では足以外は無かったことになっているのでは?となぜか変態の視点がわかった風の事を思いました。

 

羞恥心に関しては『裸はいつから恥ずかしくなったか』という本を以前読んでいます。

hikimusubi.hatenablog.com

こちらはパンチラどころか全裸はいつから恥ずかしくなったのかです。

こうして本を読むことによって、以前読んだ本を思い出したり、昔の事を思い出すことで何某かの満足感を得ています…って話が書きたかったのと脚フェチどMおじさんの件を書きたかったので、記事にしてみました。

 

あと変態は面倒くさいはこの漫画に詳しい。

hikimusubi.hatenablog.com

食べて生きてこそ『胃袋の近代』

面白い本だったのだけど、読書メーターで記録数少ないし、感想をあまり見ないので寂しい。

胃袋の近代―食と人びとの日常史―

胃袋の近代―食と人びとの日常史―

 

読了。

『胃袋の近代』読了。大正時代を中心に外食や共同炊事といった労働者の食とその周辺について論じた本。

食べものにありつける幸せや皆で食事をとることで生まれる平等や連帯感、食べることがもたらすことについてグルメではなく食べるのは生きることというのを実感するなど。

娼妓の人が「楼主の奥さんが私たちが涙とお尻で稼いだ金で着飾って自由に出かけるのはおかしい」と語ったり、貧しい子供たちも華族のように育てたいということから始まった保育園がパン屋からパン耳を貰っておやつにしたとか、飯屋の茶碗の欠け方を記録した人がいたとかところどころのエピソードが染みる。

追記:他にも女工さん向けの食事を作る人たちが「どのおかずがウケがよかった」など研究していたり、女工さんによる「(お給仕する人が)味噌汁の具を多くしてくれて嬉しかった」とエピソードが出てきたり、客の目の前でご飯を盛る、1枚皿ではなく、お茶碗、小鉢、汁物と分けることを意識的にしていた食堂の話も染みる…

 

元々はALL REVIEWSで知りました。

レビューというよりプレゼンですが、これを読んで読みたいと思ったのでリンク貼っておきます。

allreviews.jp

人間なんて『エウロペアナ』

本を読む時間が帰ってきた!やったぁ!

エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス)

エウロペアナ: 二〇世紀史概説 (エクス・リブリス)

 

読了。

チェコ出身の作家による20世紀ヨーロッパ史…という態の小説。第一次、第二次大戦の話を中心に行ったり来たり時代を飛んだりしながら語り口に不思議な心地よさ。特定の人物名が出てこないせいか、俯瞰すると人間もまた有象無象のなにがしかなんだな…という気持ちになる。

そしてヨーロッパ史で日本が出て来るのなんて、原爆の事しかないんだなーと思った。中国の話も殆ど出てこないのだけど、アウレル・クリムト幸せの鐘(O kouzelnem zvonu)」で世界の果てがロシアと中国の国境だったのを思うと日本なんてチェコからしたら最果てのあるかないかわからない国なのかもね。

 

そしてチェコと云えば人形アニメーション!と思ってしまうのは偏見だけど、人形について触れている文章が出て来ると「やっぱり、この人チェコ人だ!」と思ってしまうなど。記述自体はバービー人形や性科学における分析ですけどね。

ヤギ休暇『人間をお休みしてヤギになってみた結果』

刺激的なタイトルは期待してしまいますね。

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

 

読了。

人間辛い…悩みとか忘れてぇ…ということで全力でプレゼンして助成金を得て象になるはずが紆余曲折あってヤギになることにした男の記録。

ヤギになるために装具を開発してもらったり、解剖に立ち会ったり(カラー写真数点あり)、酵素を体内に取り入れようとして止められたり、本当に無茶苦茶やるも、最終的にヤギになっていた。

ただ、人間からヤギになって人間お休みも楽じゃないなー…となるなど。

 

人間ではなくて動物になるってSMのプレイであったよなぁ…と思うも、別にそういう話は無かった。

ただ、ヤギと致したいわけではない!という事で発情期を避けて実行することにしたエピソードはありました。

友情と希望『青い目の人形物語』

 人形が題材になっているとつい読んじゃう私。

青い目の人形物語 (1) 平和への願い アメリカ編

青い目の人形物語 (1) 平和への願い アメリカ編

 
青い目の人形物語 (II) 希望の人形 日本編

青い目の人形物語 (II) 希望の人形 日本編

 

読了。

1がアメリカ編、2が日本編。アメリカ編で出てきたお人形が、日本編に出てきます。

そう思うと様々な運命を辿っている人形だなぁ。

ちなみに原題だとアメリカ編は「SHIP OF DOLLS」日本編は「DOLLS OF HOPE」です。

 

アメリカ編は友情人形に付ける手紙の一等を貰うために奮闘する少女の話。親離れの話でもあり、少女が自分なりの幸せを選ぶ成長物語でもある。

児童文学なので、親を大事に、同級生に意地悪しちゃだめだよ、みたいなのもあるけど、大人になってから読むとそれはそれで悪くないです。なかなか子供の時にそういう教訓めいたものってなかなか響かなかったんですけどね。

 

日本編は山間の農村から土浦の女学校に入学させられた少女が人形の公式後見人となる成長物語。後に戦争になる不穏な空気はさほど感じずに終わりますが、後の現実を知るものとしては戦前のユートピアとして読みました。

土浦…これ舞台が茨城なんですよ!「青い目の人形」の作詞が野口雨情(茨城県の人物)だからということもあって、選ばれたのかしら?

その一方で主人公が北関東山間部出身なのですが、土浦を西にある町で海へと続く霞ケ浦…といっているのですが…土浦より東はだいたい海側なので、一体、どのへんだ?となりました。作者は海外の方だからご愛敬かな。

他にも取手から聖路加国際病院まで車で通うモダンガールの看護婦が出てくるのですが、昭和2年になかなか長距離通勤だな…いまだと高速道路利用で1時間だけど、当時のルートだと1時間半~2時間かな…などと出身者ぐらいしかツッコミを入れないだろう話もありました。

 

どちらも主人公の成長物語でいじめられたり、権力に屈して悔しい思いをするのですが、日本編はいじめた相手と和解がないので、それが妙に日本っぽいかなと思いました。

あとアメリカ編のエピソードでパクられた手紙の作者が日本編でちゃんと本来の作者に直っているのを見て、安心しました。よかった、よかった。

私の人形は素敵な人形『りかさん』

 

りかさん (新潮文庫)

りかさん (新潮文庫)

 

読了。

人と心を通わせる事ができる日本人形「りか」と彼女の新たな持ち主になった少女と周囲の話。児童文学なので本自体はサクッと読めますが、その中に出てくる人形観が大変刺さる。

少女と祖母の会話で「人形の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとことん整理してあげる事にある」と出て来るけど、私が人形が欲しいと思った理由そのまますぎてびっくりした。

りーぬというわけではなく、人形を探して身請けしようと思った理由が「私は愛が重すぎるから人間としてのバランスを取るために自分の好みの容姿の人形を身請けしたい」だったので。

この本自体は去年の終わりぐらいにりーぬの作者の中川多理さんが紹介していたので知りました。好きな人から好きなものを見つけ出せると嬉しいです。

服従と抵抗『人形つくり』

久々に掘り出し物を見つけた感。こういう時にいい仕事していますね…と勝手に鑑定団になってします。

人形つくり (ドーキー・アーカイヴ)

人形つくり (ドーキー・アーカイヴ)

 

読了。

外国人の子供の家庭教師を務めることになった女学生の不思議な手記と顚末「リングストーン」、女学生と木彫りで人形を作る青年の物語「人形つくり」を収録。

「リングストーン」では終盤に体操着の女子へのフェティシズムが、「人形つくり」では服従マゾヒズムがあふれていて、サーバンの変態性がしっかり出ていてかつ作風は丁寧で品がある。

ちなみにサーバンはイギリス人で本職は外交官、出身は炭鉱町で労働者階級。変態性あふれる作品を少数だけ残した作家だそうで「イギリスの団鬼六というわけではない」「拘束具が好き」…というのは国書刊行会の冊子からの情報。

本に収録されている解説によると数少ない邦訳『角笛の音の響くとき』では全裸に羽や毛皮を纏った女性を狩るシーンがあり、「わたしが女性に求める種類の歓びは実行が不可能」という言葉を日記に残していたり、木製の関節付きの人形を自ら制作するなどかなりの変態のご様子。…悩む前にフィティッシュバーとか来ればよかったのにね(たぶん、当時はなかったのでは…)。

 

少し作者の話が長くなりましたが、今回「人形つくり」に関しては私は人形になりたい系のM女ではないので、ハマらなかったものの、好感が持てる作品ではあった。

下記はネタバレ含む感想。

 

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