衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

和洋それぞれ『裸形と着装の人形史』『人形の文化史』

人形と暮らしている私が書いているブログなので、人形を扱った本の話もします。

裸形と着装の人形史

裸形と着装の人形史

 

読了。球体関節人形がちゃんと体を作って服も着せてあるのは何故?という所から始まる日本の人形史。

仏像など神事での人形と生活の中の遊ぶ道具としての人形の二部構成。

仏像は話が壮大になったり、水を入れておしっこをさせる仕掛けがある人形(豊作かどうか占うらしい)の話などはピンと来なかったけど玩具としての人形は個人的にしっくりくる。人形は大人の嗜好品という要素もあって、江戸時代に作られた役者を模した人形の存在は初めて知った。

あと、長年存在は知っていたけど、裸体を観る機会がなかったファッションドールの裸体の写真が観られたのは良かった。大学時代に西洋の服装史でどんな服が流行っているか伝える手段で人形を使っていたのは知っていたけど、実は観たことはなかった。

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体の作りがうちのレッタ(ボディが革)とかなり似ている。

 

人形の文化史―ヨーロッパの諸相から

人形の文化史―ヨーロッパの諸相から

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 水声社
  • 発売日: 2016/04/01
  • メディア: 単行本
 

読了。

西洋の文化から論じる人形のこと。私が愛好する人形の分野とは遠いかな…と思う話も多い一方、おとぎ話の持ち主を幸福にする一方周囲に迷惑をかける話に「こんな話もあるのか…」となる。

何人もの専門家が執筆しているのだけど、西洋視点でしっくりくる話が少ないのは、やっぱりある程度日本化してあるからなのかな。別の本で四谷シモンの人形は西洋っぽいけどガチ西洋と並べると日本っぽくみえるとあったし、西洋からやってきたのは確かだけど、だいぶ日本になじんだものなのかも。

ベルメールについての章では19世紀後半のドイツでチューリンゲン地方における大量生産による人形産業が発展し、それを背景にした作家としてロッテ・プリッツェルを紹介。

当時芸術方面のダンスの題材にされるなど、人気を博した作家で作風が今の作家に近い感じ。そして、私が知るのはたぶん初めて。人形と云う表現が現れた時代の話が展開されるのでベルメール人形の生まれた背景を感じることができた。

 

この本の中で一番しっくり来るのが付録として収録された四谷シモンのインタビュー。「動かせるので人形は玩具」「三つ折れ人形のようなお座りするものとか」「人形を作るのは好きだってことはあるでしょうが、結局、寂しかったんでしょうね、子供時代」などの言葉が染みるので、やっぱり私が好きなジャンルの人ではあるのだな…。

澁澤龍彦が紹介したベルメール人形が四谷シモンが今の作風に至るきっかけではあるので、そこから数えても50年と少し…私が好きな創作の、球体関節人形というジャンルはまだまだ歴史を作っている最中なのかしらね。

 

余談

こうして本を読むと知りたいことが増えていく…ハンス・ベルメールに至るまでの話でダダイズムの話もあるからダダイズムについてもう少し知りたいし、やたら取り上げられられるリラダン未来のイヴ』は読みたいと思う(ページ数が多くて躊躇しているけど)。もう1つやたら取り上げられるホフマン『砂男』はだいぶ前に読んでいます。

他にも四谷シモンへのインタビューで「ベルメールの人形はあれは犯罪と云われた」という話もあり、このインタビュー(収録時期が書いていない…)ではまだ、四谷シモンベルメール人形を見ていないとのこと。

 

四谷シモン ベルメールへの旅

四谷シモン ベルメールへの旅

  • 作者:菅原 多喜夫
  • 出版社/メーカー: 愛育出版
  • 発売日: 2017/01/01
  • メディア: 単行本
 

この本では出会うかな?近々読みます。

私は醜いけどアンタは綺麗『ぽろぽろドール』

人形が出てくる非ホラーの本を発見したので読みました。

ぽろぽろドール (幻冬舎文庫)

ぽろぽろドール (幻冬舎文庫)

 

読了。

人形に纏わる短編集。表題作は平手打ちすると涙を流すギミックがある人形とその所有者である少女の話。この人形をぶっている今よりも後にどうなったかが気になるし、何、彼氏も出来て幸せになってんの?ねぇ!ってなった。

作者の中では人形の話は容姿の話(容姿の優劣の話)と後書きで書いているけど、自分の容姿が嫌いな人と人形という構図の話が印象に残った。

具体的には容姿がいまいちな女子高生が人形を愛でる「手のひらの中のやわらかな星」、男子大学生が人形を購入する「僕が人形と眠るまで」の2つ。

「手のひらの中の~」は容姿がいまいちなばっかりにヒエラルキーが低い女子が人形にクラスで一番人気の美少女の名前を付けて愛でる話で、何をしても美少女には認めて貰えない、高校生独特の心痛む話。容姿がいまいち村の住人だったので、わかる…となったよ…。

「僕が人形と~」は美しかった世界を人形によって取り戻す話なので、ちょっとポジティブではある。 人形と容姿…好きな容姿の人形を愛でて暮らしたいと思ったのは、やっぱり自分の容姿が嫌いだったのも要素の一つなのよね。

あと「めざめる五月」で人形と陰毛の話が出て来て、フフッとなった。私が陰毛は無駄毛と思っているのも多分人形好きから…。

 

小鳥、京都に行く

先週は中川多理さんの個展を観に京都に行ってきました。

お供は人形のレッタです。

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京都タワー!」

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京都タワー!!」

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京都タワー!!!」

…なんとなく興奮が伝わるといいな…と思います。

 

京都は夜行バス→京都タワーの銭湯「YUU」…というルートで行きました。

夜行バスは時間が有効活用できますが、やっぱり体が疲れるので銭湯で体を癒して、更に100円のマッサージマシーンを使うのをセットにしています。

 

京都ではモーニングを食べたり、バスで観光地から少し外れた場所にある着物屋さんに行ったり、気になっていた喫茶店に行ったりしていました。

バスで京都駅まで戻って、パートナーからのリクエスト「阿闍梨餅」も確保し、いい感じに時間をつぶして、春秋山荘へGO!

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春秋山荘に舞い降りるレッタ。

ところ変われば展示方法や見え方も変わるので、東京の展示を思い返してみたり。

新作:赤髭公の新妻の顔立ちを観て、「今後も私は中川多理さんが作るお人形が好きなんだろうなぁ…」という気持ちになりました。

りーぬを身請けする前、名古屋まで中川多理さんの展示を観に行って「そう遠くないうちに私がより好きなお人形がやってくるかな?」と思った時と似たような気持ち…もしかしたら、また私好みの人形を身請けする未来もあるのかもしれないですね。

 

ひとしきり展示を楽しんだのちは京都駅に戻って、駅のカフェでスマホを充電、別の気になっていた喫茶店で一休み…と、人形+喫茶店巡りの京都でした。

関東育ちなこともあり、京都はアウェイの土地なのですが、今回はやっと自分の好き勝手に動けたかなぁ…なんて思いました。たぶん、また行くと思いますが、次回はさらに上手く立ち回れるといいなぁ…、

小鳥にして少女『小鳥たち』

本を読む人形たち。

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読んでいる本はこちら。

小鳥たち

小鳥たち

 

読了。

小鳥と少女の姿を自由に行き来する侍女たちの話。

中川多理さんの人形を愛でる側としては、こんなに素敵なお話から小鳥シリーズが生まれてきたのか…!と感慨深くなる。

周囲の人間による小鳥の侍女たちの評価がおかしな侍女だったり、人を魅了する存在だったり…人形というものの評価にも似ているかな?と思うなど。

 

ちなみに人形たちが読んでいるのは特装版です。

 

おまけ

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「私、小さくてページがめくれないから、読んで」といいそうなレッタ(右)。

私と人形と『人形気分』

このブログ、人形ブログとして始めたのですが、すっかり読書ブログです…。

人形気分

人形気分

 

読了。

京都の昔人形青山/K1ドヲルの店主によるエッセイ。お店は行けず終いだったのだけど、掲載誌のDFJは今は無き池袋のぽえむぱろうるで読んでいたなぁ…。

猫のクッキーちゃんのお話は聞いた記憶があるので、どこかですれ違ったのかしら…と、人形とその周辺に思いを馳せながら読みました。

 

それにしても、創作の球体関節人形を気にし始めて、今年で18年経っていました。

本文で「人形を一体も持たないのに人形を語る人がいる」と本文にあったけど…人形に関しては実物を観に行くことに拘って、高校時代からわざわざ上京して観に行っていたので、許して欲しさある…。

18年のうちにブランクはあるものの、現代美術館での球体関節人形展、渋谷にあったマリアの心臓、浅草橋のパラボリカ、鳩山会館…色々観てきました。

紆余曲折を経て、人形がいる我が家ですから、今後も楽しく人形を愛でて暮らしていきたいです。

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中川多理さんの京都での展示DMを観るりーぬとレッタ。

レッタが「あ!大公妃様とお姉様たちだ~」と寄り添うのに対して、りーぬは「この子、いいとこのお嬢さんなの…?」やや困惑していそう。

こうして並べると、レッタの顔はりーぬより強そうです。

家族が増えました

りーぬの妹的な意味で。

久しぶりに人形の記事です。

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立派な箱がやってきました。

 

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中から手が翼の骨になっている女の子が!

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りーぬは「なんだかよくわからないけど…妹よね…」みたいな表情。

りーぬと同じく、中川多理さんの人形です。

 

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命名ヴィオレッタ。

そのうち「レッタ」と略しそう。

初対面でやたら気になる存在になったため抽選に申し込み。

服が紫色なので、「名前はヴィオレッタ…かな…」と思って申し込んだら、当選。ありがたやー。

 

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現在の我が家の人形たち。

りーぬの手がヴィオレッタの手を取るのにぴったり。

ヴィオレッタはおでかけに活躍しそうな予感です。

人形は増やさないと頑なに思っていた私ですが、ヴィオレッタが加わって人形生活に違った道が開けそうです。

所有5年目の話と『小鳥たち』

りーぬが手元にきて4年経ったり、私の誕生日があったりしましたが、需要があるのはりーぬの方なので、りーぬの写真を載せておきます。

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前に撮ったオフショット。

実際のりーぬと写真のりーぬ。

私に似て?写真嫌いなのか写りのいい時と悪い時が激しいりーぬですが、我が家でよく使う部屋、自然光、あと服を着ているときがいい顔をしてくれるような気がします。

りーぬのデフォルトは裸にウサギのフード(この写真でも着用しているものです)なのですが、母が澁澤龍彦所有の四谷シモンの少女人形に対して「娘のようにかわいがっている、と合ったのにいつも裸で可哀そうだった」というのを思い出すので、服は…着せたほうがいいかな…という気持ちになります。

 

小鳥たち

小鳥たち

 

現在展示が行われています。

 

棺桶に入った大公妃の人形に多理さんの表現の幅広さを感じ、いつも以上に可愛らしい小鳥たちにぐっとくる。今回は全員素敵なお召し物を着用、小鳥たちの手の小ささもあって少し前の作風も思い出す懐かしさと華やかさが入り交じる展示でした。

中川多理さんの作品を熱心に観るようになってしばらくぐらいは手が少し小さい少女とか纏足の少年が多かったので、思い出すあの頃…。 今回の展示は衣装が趣味にどストライクなので、延々衣装を観ていました。うちのりーぬにも作ってあげたい…