先日の「容姿をほめる意味で人形のような…と使われるようになったのはいつ頃?」という話を頭の片隅に置いて生きています。
1911年が初出の童謡「人形」(私の人形は良い人形~♪って歌です)は人形の容姿をほめる歌なので、これ以降でもいけるのでは?というのが本日のひらめきです。
ちなみにこの歌は大越孝太郎『天国に結ぶ恋』で結合双生児の兄妹が歌っているシーンがあります。そんなわけで大越孝太郎と人形の話。
大越孝太郎は『人形考』という本に寄稿しているので、先日読んだ『人形論』にも名前がさらっと出てきますので、人形に関連が深く思えますが、意外にも大越孝太郎の漫画で人形が特に大きく取り上げられるのは単行本収録作品では2作品ほどです。
もう16年前の本なのか…。
それはともかくこちらに収録されている「人形姫」が人形を扱った作品です。
内容としては隔離政策がとられた病気の女性から生まれた男の子が人形と出会い、その後の運命を大きく狂わせたんだろうな~というのが想像できる話。
短編でページのほとんどは出会い、ともに時間を過ごすところに使われています。
…って書くとちょっとロマンティックですが、人形と相思相愛ではなく、一方的。
一方的というのもまた人形相手っぽいですね。
あとはAmazonでは購入不可で名高い(名高かった?)『猟奇刑事マルサイ』に「シリコンラバードーターズ」という作品があります。
こちらは連続ラブドール遺棄事件から発展する異常な愛の話です。
元々大越孝太郎の描く女性は人形のような整った容姿なのですが、作中のラブドールの可愛さも他の人物に負けず劣らず、他の人物に「今日のモデルよりいいですね」「なに、このジェラシー」と云われるなど魅力的に描かれています。
ちなみにこの漫画を描いたときに大越孝太郎はラブドールの実物を見たことがなかったそうです(のちにオリエント工業の人造乙女博覧会で実物をご覧になっています)。
読んだ記憶はあるのですが、大越孝太郎が少年時代に入院した時に綺麗なお姉さんが入院していて「人間やめて人形になればいいのに」と思った話が出てきたことしか覚えていないです。
TH no.41 トラウマティック・エロティクス (トーキングヘッズ叢書 第 41)
- 作者: アトリエサード
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2010/01/29
- メディア: 単行本
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人形作家の森馨との対談を収録。
『猟奇刑事マルサイ』に出てくる四肢切断の女性は四肢のない人形をイメージして描いている話が出てきます。
先日、沙村広明『ベアゲルター』が良すぎて、一番好きな!大越孝太郎はどうした!となったので、人形に絡めて書いてみました。
寡作、絶版…で読むチャンスは多くないのが欠点ですが、一番好きな漫画家です。