衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

面白がりつつ敬意を持つこと『圏外編集者』『非道に生きる』

 シンプルライフ系の本ばかりでしたが、ちゃんと趣味嗜好の本も読んでいました。

圏外編集者

圏外編集者

 

読了。

 

前々から思っていた「この人は面白がると同時に敬意がある」がはっきり文章になっていてよかった。ネタとして楽しむのではなく、ちゃんと敬意あってこそだよね…。 著作の裏話他、本が売れないのはつまらないからという説、自分の足で探すという矜持、アートを滅ぼすのは美大など楽しい話題が多かったです。

特に美大の話に関しては少しだけ心に肯定を得た気持ちになった。 絵を描くのが好きだった時があるので、美術系への道を夢見たことが一瞬あったのだけど、高校時代に「美大は喰っていけない」と親に突っぱねられている。

今は上手くいかない自分の人生に修正に修正を重ねてなんとか生き延びる方向でいるけど、ふと母に「私の希望に対して反対したよね?」と云ったら「今からでもやればいいでしょ」と返された。その時したかったんであって、今じゃ何も興味がない…。

 

 

非道に生きる (ideaink 〈アイデアインク〉)

非道に生きる (ideaink 〈アイデアインク〉)

 

 「アングラの趣味嗜好を持った人々をバカにしてはいけません。めちゃくちゃ辛くておいしいカレー屋さんがあったとしたら、その店にカレー好きは殺到します」と園監督が語っているのだけど、好きな事をやっていて質が良ければ人は付くっていうのと映画から感じていたアングラへの敬意あっていいな…と思ったので、思い出しました。

攻撃に至る病『なぜあの人は平気であなたを傷つけるのか』

 後半は私個人の話です。

なぜあの人は平気であなたを傷つけるのか

なぜあの人は平気であなたを傷つけるのか

 

 読了。

人間嫌いになりそうな人のための本を目指して書かれていますが、読み終えても人間が好きにはなれない本です。でも、相変わらずほの暗い満足感が得られるので好き。

サザエさん一家が家庭崩壊したら…というような文章があり、DVするマスオ、ネグレストされるタラちゃん、フネにアブノーマルセックスを強要するナミヘイといったへんてこな光景が描写されますが…もちろん本文の方が圧倒的に面白いです(そして爆笑しちゃったので私の人間性が疑われそう)。

 

序章で「どれほど注意していても嫌な奴らはわたしたちの前に登場してきます」とあり、まったくだーとなる。攻撃してくる人間からは逃げるか少し餌を与えて満足させるかのどっちかとのこと。

そして攻撃に至るものとしてアイヒマン実験の話がたやすく残酷な事をするという例に出て来た。この実験の話、久々に読んだなぁ。昔は世界まる見えとかアンビリバボーで紹介されるような話だったんですよね。

 

ここからは予告通り私個人の話。

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病まずとも『「いかがわしさ」の精神療法』『秘密と友情』

病んでいたほうがいい作品が描ける?論争があったそうで、好きな画家さんがその話をしているのをTwitterで見るなど。その方の結論は「現状に対する不満、葛藤や怒り、問題意識の有無であり病んでいるかではない」とのこと。

幸せになると作品がつまらなくなるなんて云い分は過去に何度も見てきたし、身近では我が母が「作家のエッセイは初期は面白くても金を持ち出すと途端に俗っぽくてつまらなくなる」と云っていたのを思い出しますが、怨みはパワー、憎しみはやる気というのは私個人の過去の出来事を顧みてもわからなくはないです。

 

画家からの側面で病んでいるのは重要ではないと思いますよ、という話が出たわけですが、病んでいる人を専門的に診ている精神科医春日武彦氏の本で「精神的な病気の患者が芸術の才能があった話は全くといっていいほど無い」「病んでいる歌人は多いが、病んでいる人に歌人の才能があるというケースはない」という話をしていました。

この説は今後もことあるごとに思い出していきたい所存。

 

ただ療法として何か作品作りに打ち込むというケースはあったのか、行きつけの店の店主が精神病患者の作品展に行ったことがあるという話をしてくれたことがあります。

「大きなキャンバスに黒電話がいっぱいに描かれていて、タイトルが『ピンクの電話』なんだよ!」と大変楽しそうに話してくれました。

 

「いかがわしさ」の精神療法

「いかがわしさ」の精神療法

 

先の記述はたしかこの本。 他にはだらしなさを指摘する前に語彙を豊富にしようという論考が面白かった。語彙が貧弱故に言葉で言い表せぬ事象が増え、結果、社会から見れば歪な存在となっていくという話なのですが…私は社会不適合者だけど、そこまで歪な何かにはなりたくないなぁ。

秘密と友情 (新潮文庫)

秘密と友情 (新潮文庫)

 

歌人の話が出たのでこの本も。

春日武彦穂村弘の対談集。テーマに沿って対談しているのですが、穂村弘が「ガールフレンドが出来る前に死ななくて本当に良かった」と語る「孤独」がテーマの回、春日武彦が「家族の病理は健全な順に逃げ出し結果病理性があるのが残って凝縮する」と語る「家族」の回が良かった。  

肝心の穂村さんは最近父から子へ送る本に『漂流教室』を薦めているのがネットで話題になっていました。

首を巡るお話『首切りの歴史』

 

首切りの歴史

首切りの歴史

 

読了。

 

史実、美術、事件など切断された首の話。 干し首は需要があるから作られた話から続く章が日本兵の首が戦争の土産物として人気だったという話でダメージを受ける。 昔の話とはいえ、同じ人種が酷い目にあっていた話は気がめいってしまう。

発見があったのは1944年、日本兵の頭蓋骨がお土産にされて、その首を観ながら女性が手紙を書くという写真がアメリカの雑誌に載ったところ批難が殺到したというエピソード。終戦前だからあちらでは日本人は人間扱いされているか怪しいと思っていたけど、そんなこともあったのね。

 

ちなみに日本人の頭蓋骨は主に南国の戦地ですでにお亡くなりになり肉が腐り堕ちるなど骨の状態になったものが多かったとのこと。意外と首を切って持って帰っても骨にするのには労力がいるらしく、他の章から総合すると人間の頭蓋骨を綺麗に取るのは難しい様子…また一つ無駄賢くなりました。

が、動物の頭蓋骨を採るときもちゃんと肉をはがしたり、脳みそを出さないといけないし、意外と手間がかかるので、そういうことかもしれないですね(経験談)。

 

余談

首切りの歴史の本なのでギロチンの話も出てきますが、ギロチンの製作者がチェンバロ職人と記憶していたところがピアノ職人になっていて、翻訳の関係か原文がそうなのかちょっと引っかかった。が、そんなところに引っかかるのは私か友人か熱心なイノサン読者かと思う。

 

干し首は数点しかないのに干し首博物館と呼ばれている博物館があったけど、それをいったら明治大学博物館も刑事部門が目立つので一部で拷問博物館って呼ばれている。展示の目玉があるとその事で俗称ができるだなと思うなどした。

 

…それにしても残酷な読み物を読むのに体力を要すようになりました。体力の衰えを感じずにはいられませんが、きっとどこかで私の感性が変わったんでしょうね。

ムショから生まれて娑婆で愛される『刑務所良品』

 

刑務所良品―Made in PRISON (アスペクトライトボックス・シリーズ)

刑務所良品―Made in PRISON (アスペクトライトボックス・シリーズ)

 

読了。

 メイド・イン・刑務所の品の紹介と刑務所の紹介。無印より安くて普通!

家具をコーディネートしたページでは本当に普通の、どっかで観たことあるけどうちじゃない普通の部屋が出来上がっていて面白かった。

その一方、函館少年刑務所の獄シリーズはやっぱり素敵。

 

刑務所の紹介も面白かった「うちはカラフルだから夏に来てくれればよかったのに…腕が」という広島刑務所、外観が明治期のレンガ造りの千葉刑務所、もはや見学施設になった網走刑務所など眺めて楽しかったです。

網走刑務所には金カムの白石のモデルになった脱獄王:白鳥のマネキンもあるそうなので、見学に行ってみたいですね。

 

この表紙の男が白石です。

仕事があってこそ『天国は水割りの味がする』

スナックはまだ行ったことないのです。

天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)

天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)

 

読了。

東京のスナックの紹介&ママさん、マスターにインタビューした本。

仕事論も感じるので、頑張ろうという気持ちになったり、職種は違えども参考になるな~と思ったり。

本文もいつも面白いけど、この方の本は後書きが染みる。「ほんとうにおもしろいものはマスメディアの外に、そして自分のすぐそばにある」って本当にいい言葉だと思う。

何か面白いものは自分の足で探さないと…と思っているけど、その肯定が得られたようで嬉しいです。