衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

病であっても肯定する『痩せ姫』

 

痩せ姫 生きづらさの果てに

痩せ姫 生きづらさの果てに

 

 読了。

 

摂食障害の低体重の女性を痩せ姫と呼び、考察しつつ愛でている本。実際に痩せ姫へのラブレターと書いてあり、文章が痩せ姫への好意に満ちているので、読み心地が良い。

 

痩せ姫たちの食事(吐くこと込み)などの生活事情、SNSでの交流、歴史上や文学の世界の痩せ姫の紹介や、フィクションにおける物語と結び付けての考察、実際に著者がネット上での痩せ姫とのやり取りでの出来事で構成。

死に至る病でもあるのですが、痩せ姫からの卒業も惜しんだりせず送り出す方針が伺えます。

大量に食べて吐くためにバイキングに行き、店を追い出されて悲しみ、そして痩せ姫同士で「みんなで行けば店をつぶせるんじゃないか」というやり取りは正直ひいてしまったものの、これもまた痩せ姫事情のうちの一つなんでしょうね。

この件に関しては「一定の慎みを持っておくことで、店側の印象も多少良くできるのではと思います」と著者も書いてはいます。

家庭がなければ風俗で働く痩せ姫に会ってみたかったと書いているものの、痩せ姫の体格と同時に痩せを維持するストイックな精神に惚れ込んでいるそうで、フェティシズムを表立って出してはいないのもいい。

痩せ姫事情に驚くことはあれども、全体的に著者の何かを愛好する熱意を感じられた良い読書でした。

今につながる当時の話『ペヨトル興亡史』

 

ペヨトル興亡史―ボクが出版をやめたわけ

ペヨトル興亡史―ボクが出版をやめたわけ

 

読了。

 

ペヨトル工房のこと。2001年発行なので、17年前の本…私はペヨトル解散後の世界しか知らないのですが、この本には現在に繋がる話も多く、解散後も活動してくださったお陰で私が幸せになれたことも多々あるので感謝の気持ち。

年齢的に現役時代に触れることは叶いませんでしたが、ペヨトル解散後、04年に日暮里のギャラリーで夜想関連のイベントがあって、そこでペヨトルの本が沢山並んでいて閲覧出来たのが嬉しかったですし、その後ギャラリーのパラボリカが出来たりしたので、解散後の出来事を見てきたのだな…と思うなどしました。

マンディアルグ「仔羊の血」に絡めて寺山修司に原稿を依頼したが出て来たので、更にりーぬへの思い入れが強くなりますね。りーぬは「仔羊の血」のマルスリーヌ・カインなので。

ハロウィンとご遺体『実録死体農場』

アメリカではハロウィンの飾りに本物の人骨が使われているケースがあるそうで、その大半は日本人の骨だそうです。

 

実録 死体農場 (小学館文庫)

実録 死体農場 (小学館文庫)

 

 

出典はこの本。 

人間の死体の腐敗などについて研究、調査、実験をしているテネシー大学人類学研究施設、通称:死体農場の設立者が関わった死体にまつわる話。

読んでみて知的猟奇心を満たしてくれた事を報告致します。

環境による死体の腐敗や白骨化、蛆虫の湧き方、猟奇殺人の死体の話など興味深い話しかないのですが、特に防腐処理された死体の話が興味深かったです。防腐処理にもやっぱり限度もあるし環境もあるかー、そうかー。

フィリップ・K・ディック酒場に行ってきた

hikimusubi.hatenablog.com

行きたいと云っていたフィリップ・K・ディック酒場(以下PKD酒場)に行ってきました。

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小川町から歩いたら迷子になったけど、無事たどり着いたよPKD酒場!

看板もあって目立つぜ、PKD酒場!

 

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中に入ると各国の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の表紙が貼られています。

やっぱり羊を吊ったデザインが多し。

 

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ブレードランナー』に出てきたユニコーンを折れます。

お通しのごとく折り方と折り紙を頂きました。

折り紙を折りつつ料理を待つなど。

 

料理の写真がありませんが、「アンドロイドは羊の野菜炒めを食うか?」「屋台のおやじの水餃子」を注文。

野菜炒めは羊の肉入りでお酒のつまみになるように味はちょっぴり濃いめ、屋台の親父の水餃子はスープにシソが入っていてすっぱめさっぱりなスープでおいしかったです。

同行してくれた恋人がカクテル「デッカード」を飲んでいましたが、ジンジャーエールが入っている味と云っていました。

 

開催されている早川書房の喫茶店:クリスティでは、同時に神田カレーグランプリも行われており、後から来たお客さんがカレーかPKDか聞かれていました。

ん?私たちは何にも聞かれていないぞ…店に入る前に看板を撮影したから?

コンセプトカフェというよりは、出版社の喫茶店がPDKにちなんだメニューを出しているという感じです。店員さんに変に話しかけられたりしないので、一人で行っても、仲間内で行っても気楽な感じでした。

3体目 T soul Brother

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2015年12月撮影。

中川多理さんのワークショップにて。

作りかけのイノサン、川に流された百鬼丸にちょっと似ています。

 

この頃にはレレチカもマルスリーヌもいたのですが、好きな作家のワークショップで構造も見ることもできて、とても楽しかったです。

参加者もオーナーの方がちらほらいました。

 

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2015年12月撮影。

イノサンと対面するマルスリーヌ。

りーぬの表情がすごく不安げです。

お祓いと幸福『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』

 

鬱屈精神科医、お祓いを試みる

鬱屈精神科医、お祓いを試みる

 

 

読了。 住居や生活に関してのエッセイ(著者としては私小説)。

前作が『鬱屈精神科医、占いにすがる』なので神社めぐりかと思ったら違った。 お祓いはモーパッサンエッフェル塔が見えないからという理由でエッフェル塔のカフェで食事をしていたことにヒントを得て、あえて自分を認めなかった母が住んでいた家に住むことをお祓いとしたからとのこと。

 

著者が精神科医なので患者が変な家を作った、持っていたというエピソードも近くにいたら大迷惑だが読み物として楽しい。全体的なトーンが暗くて落ち着く。それほどメインには出てこない配偶者と著者のエピソードがとても良い。

うたたねをしていたら、配偶者が歌を歌いながら食事の準備をしていたという話なのですが、その様子を「今現在を肯定している気持ちが、そのまま素直に歌という形を取っているように感じられた」とあり、「大きな安堵感であった」と表現している。

 同じ著者の『幸福論』では著者の配偶者が著者の寝室に猫(配偶者にしか懐かない)を入れるエピソードが幸福の1つ数えられていたが、幸福なるものは自分の日常で感じる安堵なのかもしれないと思いつつも、幸福について語ると途端に胡散臭くなるので、この辺で。

 

幸福論 ―精神科医の見た心のバランス (講談社現代新書)

幸福論 ―精神科医の見た心のバランス (講談社現代新書)

 

 斜に構えた話ばかりなのですが、珍しいものを見たことを世界の仕組みを観たと表現するなど「確かにそれはちょっと嬉しい」と思う話が多々ある。