衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

不道徳、ゆえに真面『不道徳お母さん講座』

久しぶりに本を読んで爆笑した。

不道徳お母さん講座: 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか

不道徳お母さん講座: 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか

 

読了。

「どうして、読書だけが推奨されるんですか?」から始まる道徳や母性、自己犠牲は如何にして作られたかについて。日本で教育を受けた人がほぼ通ってきた「ごんぎつね」の話や組み体操、そして最近の話題では1/2成人式などが著者、そして著者の娘さんの鋭いツッコミにより異様さを浮き彫りになる1冊。

 

このね、鋭いツッコミがツボで爆笑しました。

「ごんが栗や松茸を運んだのはなぜですか?」と問われて「性器のメタファーだから」などと答えたら小説解読以前に社会生活が危うい。

 これを筆頭に出てくる、出てくるキラーフレーズ。村を焼く少女小説が人気、群読(「楽しかった」「臨海学校」とかそういうのね)では事件簿だって入れたっていいんじゃないか「クラス一丸となって隠蔽した」「いじめ事件」とか…と内容は真面目だけれども笑わせてくる。そうだね、フィクションにおける暴力は良いよね!

他にも巌谷小波版の桃太郎では犬がいきなり「かみころすぞ、ゴルァ!」という趣旨のセリフあったり、雉は鳥類離れしてしている殺傷力があって「お前は、ラドンか!」となるし、桃太郎も桃太郎で鬼の首を切断して持って帰って瓦に飾って本当の鬼瓦にすると啖呵を切ったり、山本タカトの絵が似合うような残酷さ加減。

 

高校までのあの学校の作られた胡散臭い健康的な感じが大嫌いでしたが、かといって不健全なものを持ち込んでは教育に悪すぎることはわかってはいる。著者も野坂昭如『骨餓身峠死人葛』を持ち込んで音読してはいけないのはわかっている。だがしかし…なのだ。

そして1/2成人式と云う感動の押し付けはみんな負の意味の注目の江戸しぐさのあの団体が推奨しているという話を聞くと、この世は避けて通りたきものしかない道を通らざるをえない気持ちになり憂鬱になる。

憂鬱にはなるものの、最後にかこさとしの話が一瞬出てくるのが良かった。子供の事を感動搾取の対象ではなく、ちゃんと考えてくれる人もいるというのは子供にとって救いでもあり、上手く出会えることもあるのだ。