衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

101年の人生『ひみつの王国』

1週間本を読むうちに1冊でも当たればいいと思っているけど、これは大当たり。

ひみつの王国: 評伝 石井桃子 (新潮文庫)

ひみつの王国: 評伝 石井桃子 (新潮文庫)

  • 作者:尾崎 真理子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/03/28
  • メディア: 文庫
 

読了。

翻訳者で児童文学者の石井桃子のこと。明治大正の浦和に雛人形を送る風習があった他、子供時代の話で私の趣味の分野を擦ってきたり、賢かった姉が進学させてもらえず嫁にやられてしまった事から本人はなんとか進学し独りで生きていくことを決めるなど熱い人生だった。

こんなカッコいい人が私が幼少期に親しんだ本を翻訳したのか…!という嬉しい衝撃。

全7章からなるも、ずっと「プロジェクトX」、女ののど自慢、出版の歴史とも重なり有名な人物が大量に出てくるので、出版社版『窓から逃げた100歳老人』か!となる。

みちのくが生んだイケメンメンヘラ男子:太宰治に想いを寄せられていたけど「訛りが酷いから愛を語れない」と語る一方で「私なら太宰治を死なせないけど」と語る様子が格好良い…カッコいいぜ、桃子!となる。

菊池寛が大学は出たけれど仕事がない才媛たちに仕事を与えていた話があるのだけど、チャーリーズエンジェルスみたい。このチャーリーズエンジェルスならぬKKCKN(菊池寛)'sエンジェルスの話で一瞬だけ谷崎潤一郎の2番目の奧さん、古川丁未子の話が出てくる。本当にこの人は現代ウケしそうな容姿の美女(ネットでは橋本環奈や宮崎あおいに似ていると評判)なのだけど、本文でもはっきりと「美女」と書かれていて、ニコニコしてしまった。私のタイプでもありますよ、丁未子。

 

丁未子に話が持っていかれそうになっていますが、この辺までは戦前の話。戦中~戦後しばらくは女友達と東北で開墾したり、東北と東京を行き来したり、女同士の友情があったり留学したり…とにかく話題がたくさん、濃密な101歳まで生きた石井桃子を著者が石井本人には嫌がられそうな勢いで送る愛のむきだし…表紙のヘンリー・ダーカーに無理やりつなげてくる無茶な事もしてくるけど、日本語感覚を石井桃子訳によって養われた子供時代を持つ者には「こんなにカッコいい人に育ててもらったのか!」という発見が多いことが約束される…かもね!

 

元は友人が最近読んで面白かった本として話題に出してくれたことで知りました。

「働く女子の話だよ」みたいな控えめなまとめだったけれども、とっても格好良かった。