衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

音声ゴアグラインド3月号

今月は10冊読めました。

どうしても戦争に関係した本を手に取り勝ち&読み進まないなんてそんな3月でした。

服の話

服飾美術館の洋服補修士学芸員と服好きな美男子の話。

服を通して人生を取り戻す話かつ恋愛要素が薄いので、話のバランス感覚が好みだった。コルセットが話の中でも重要な役割を持っているのだけど、それを可憐な拷問具と表現したのは京都服飾文化財団の方とのこと。

服が好きな美男子が女子の服が好きで、彼が男性の服装が華やかだった時代があったと知った時、すごく感激したんだろうな…とか、学芸員のつよつよ美女の過去の設定とか、刺さる要素もあって、ここ最近読んだ小説では久しぶりのヒットでした。

この作者の本は私が好きなものが取り扱われていることが多くて、恐る恐る手に取るのだけど扱い方やバランス感覚の良さで今のところ厭な思いをせずに済んでいるのがありがたい。

 

新聞記者で独学で洋裁を学び個展もする著者によるエッセイ。個人と服と暮らしと…という趣きで、服を作る話が多い。実家にしろ、前の家にしろ、服を作る人との暮らしを思い出す場面もあり、自分の中の洋服観の確認になった…私はすっかり和服の人だけど。

ファストファッションの問題もあり、在庫処分業者の方による「今の時代は、かわいい商品を安く、好きなときにほしい。そうするには、たくさんつくるしかありません」という言葉が出てくる。…手元におきたいほどのものを安く済ませたいとは何事か!と老害以外の何者でもない事を思ってしまうなどした。

 

 

世界進出した西陣織の織屋12代目による本。工芸をビジネスとして成り立たせるのに「固定概念の打破」「妄想」「美意識」を3つの柱として語っている。ビジネス書だけど、着物好き、そして工芸は多分好き側の私としては舞台裏みたいで楽しめた。

著者は元ミュージシャンで皆が食べられるようにファッションビジネスに乗り出して失敗した話もしているのだけど…ファッション関係の人たちでたまに内情をぶっちゃける人がいるのは、再現性が低く、個の美意識が大切だからかな?と思うなどした。

美意識の育て方は良いものに触れること、工芸なら生活の中で使うこと、そして美意識を更新することとあり、嬉しくなる。わからない、そして何も作り出せない私だけど、美術館に行くこと、本を読むことはやめなかったのは美意識のアップデートもあるよなぁ…と肯定を得た。

 

戦争

チェコテレジンにあった収容所で密かに発行されていたヴェデムという雑誌について。みんなで雑誌を作って読んでは団結と生き延びる活力であり、創作なるものは生きる行為だと感じるなどした。

投稿型の雑誌だったようで「自分たちの運命は国家の政治体制によって決められてしまうから、帰路に立たされたとき、自分たちはしっかりと判断し、行動しなければならない」という真面目な話もあり、かこさとしを彷彿とさせるなど。

チェコの国民的なスポーツであるサッカーの話もあり、収容所で作られた人形の写真も。人形のクオリティは高く、やっぱりチェコといえば人形ですよね!と納得した。

 

 

2013年ウクライナ在住ロシア語で小説を書く作家による日記。侵攻のニュースを聞いて手に取るも8年ほど前の話のはずだよね…?と確認してしまうし、しんどさがありやっと読み終えた。2014年2月20日「ロシアはウクライナで戦争を欲している」の文章にそわっとした。

 

戦争に関する本が意外と読み進まず、『コーカサスの金色の雲』、『ナチス機関誌「女性展望」を読む 』は駆け足で読んでしまった…意外と持っていかれるメンタルなこともあるようです。

コーカサスの金色の雲』でソローキン『氷』にも出てきた「子供たちが列車に乗せられていく」というのは、ロシア人ならピンとくる何かなんだろうか?というのが引っかかっている。残念ながら特定の生まれ育った人にはわかる…という感覚は上手く教えてくれる人がいればいいのだけど…今はまだ出会えていない。

 

 

今楽しみに読んでいる本

ボディポジティブとかジェンダーとかかな…?前情報を入れずに楽しく読んでいます。

 

 

おわりに

ハンス・ベルメール風にしたりーぬ。

ハンス・ベルメールの人形はナチスへのアンチですので、久しぶりの人形の写真として載せておきます。