衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

2021年上期ベスト約10冊

ご無沙汰しておりますが、今年もやります、半年分の10冊。

 

淡々としているものの、囚人により北海道開拓の歴史でもあるので、金カムで聞いた話も時々出てくる。囚人たちの死亡率と重篤な障害が残ってそしてお亡くなりになる率が結構高いので、北海道送りは実質死刑でしたね、当時…という気持ち。

 

新しい女として生まれ時には同性と対立し、古い価値観にとらわれたり、やっぱり戦争には勝てなかったよ…と挫折しつつも子供を育て、心配し、不倫や熟年離婚を考えたりしつつも自立を思い立ち、今は老後を心配している…そんな人が浮かび上がってくる。

 

中世代の婦人たちのひとり暮らしについての聞き取りを中心にしているものの、低賃金、性差別、年金問題などを読む度に「他人事じゃないのよね…」と頭を抱える。1975年発行なので、46年経っても解決とはならなかったの…となる。

 

日本における生理用品のあれこれ。ナプキンがなかった時代の章、不浄扱いの歴史の章の次にやってくる生理用品プロジェクトXな章がとても良い。

月の名状しがたき『生理用品の社会史』 - 衛生ゴアグラインド

 

矯正施設である少女少年院に収容された少女たちについてのインタビューや出院後のこと。

やりなおす機会を『少女少年院の少女たち』 - 衛生ゴアグラインド

 

 いくら何でもこれは非人道的すぎる…。

 

 シングルマザーで貧困に陥った女性の手記。

貧困からの脱出『メイドの手帖』 - 衛生ゴアグラインド

 

ポーランド系ドイツ人女性の話。貧しさ故の師範学校への進路、孫ほどの歳の坊っちゃんとの交流、そして、明かされる事実…と所々でぐっとくるフレーズがあり、読書する楽しみを思い出す。

読んだときの私の状況も相まって「人生は喪失の連続なんだから、あなたも然るべきときに喪失を受け入れることを学ばなくちゃね」という言葉は染みる。

 

島尾敏雄の妻であり作家の島尾ミホに関する評伝。遺族の了承もあり一時資料から得た情報が多く「お疲れさまです…」という気持ちに。島尾敏雄『死の棘』でなんとなく流した箇所が腑に落ちると同時に、ミホに自分に似通った所があるなぁ…と思い憂鬱になる。

25歳の女(島尾ミホ)を少女扱いしているのは巫女的な要素に繋げる意味があったのでは無いか説があり、少女ネタはやっぱりしんどいな…と思ってしまった。

少女礼賛文明で育ち、少女じゃなくなった後の人生を生きているから。

 

グレイテストヒッツ的なもの。

教科書で読んだエッセイもあるので、再会する喜びと新たに読む喜びが入り交じる幸せな読書。

 

今回は戦争と女性が中心になりました。

人形枠、服飾枠がない珍しいベストになりました。

 

今回はTwitterのスペース機能で先行発表という形をとってみましたが、だらだら本の話をするのは楽しかったです。

またやりたい。

 

覚書

今回のスペースで触れた本

皆川博子『聖女の島』(『少女少年院の少女たち』からの連想で)

酒井順子『ananの嘘』(『百年の女』を読むきっかけで)

島尾伸三『魚は泳ぐ愛は悪』(tigerさんよりご紹介)

コジンスキー『ペインティッド・バード』(『ブラッドランド』を読むきっかけが映画『異端の鳥』だったので)

村田らむ『ホームレス消滅』(ベスト10冊選外として)