『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の劇薬本リストにある本をすべて読んだので、それ以外で劇薬本かな~と思う好きな本の事を。
綺麗な少女が酷い目に遭う話が好きだった。
美女は酷い目に遭って殺されたり人形にされたりするものだと思って沙村広明と大越孝太郎を愛した時代が終わりを告げたのは『仔羊の血』を読んだから(大越孝太郎も沙村広明も今でも大好きです)。
少女が酷い目に遭うもそこに待つ終わりは死んだり人形になったりもしないのは私の趣味の集大成でした。
スゴ本の中の人:Dainさんも読んでくださったのが嬉しかった
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読書は毒書、マンディアルグ『黒い美術館』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
人が派手に死んだり、パワフルなキチガイが出てきたり、子供が酷い目に遭ったり、ドラッグ描写があったりしないので、厳密には劇薬本ではないのだろうけどフェティシズム文学の中であまり人に知られていないような気がするのがこの本。
様々な変態が出てくるけど、主人公のじいさんが一番変態。そしてこんな変態はこの世界のどこかにいる。
池田得太郎『家畜小屋』
文章じゃなくてもいいんだけど、何か表現したくて文章を選んだ結果、ドロドロした物が出来ちゃった…という可能性を感じるのがこちら。
「家畜小屋」は好き好んで畜生に堕ちていくけど、「鶏の脚」は好き好まずに人間より下に堕ちていく。豚と同等、鶏より下…人の尊厳についてつい考えちゃいますが、人が上だと思うなよ!というメッセージは別に無さそう。
この本が読めるとしたら国会図書館しかないのが辛いので、どっかの出版社が文庫で再販してくれないんですかねぇ…。
大越孝太郎『猟奇刑事マルサイ』
警察に猟奇事件専門の部署があるという無茶苦茶な設定もさることながら、彼らが迎え撃つのは変態犯罪者ども!
犯人も狂っているけれども、刑事たちも特殊能力とフェティシズムに特化した人たちで、変態に変態を重ねてもっと変態を濃くしてくる。
警察が猟奇事件を追う小説『ストロベリー・ナイト』で主人公の姫野がサイコパスと同じ思考を持っていることにショックを受けるけど、あなたマルサイに入ればよかったのにね…でも変態じゃないからマルサイは無理か。アッハッハッハ!
平山夢明「おばけの子」
虐待された子供は一体に何に幸せを見出すのか。底辺の中でも幸せが宿る短編集『暗くて静かでロックな娘』の中でも「おばけの子」は最も過酷な児童虐待のお話。
その後、この話と同じような事件が出てきて、びっくりしましたが、人が考えることは案外再現性があるもんだなと変なところで感心しました。
…そんな感じでしょうか。
私が「血とかモツとか出せば喜ぶと思っているんじゃねぇぞ、コラ!」というわがままに育ったのは16歳ぐらいの時に大越孝太郎作品に出会ったのが大きいです。
大越孝太郎さんね「猟奇マンガは読む人がけっこう厳しいんですよ。綺麗な主人公じゃなきゃイヤだとか、話もちゃんとオチが付いていなきゃ駄目とか。絵が未熟だとお話にならない」と昔のインタビューで云って、さすがです…となりました。
そうです、私は絵は綺麗じゃないと厭だし、話はちゃんとしていて、オチが付いている方がいいんです。
元々、横溝正史を愛読し、澁澤龍彦をクラスメイトと読む青春を過ごした母に育てられて、暗黒文學少女しか選べない人生を歩みましたが『不思議庭園の魔物』に収録された「人形姫」で私の人生は完全に固定されてしまいました。
紆余曲折あって、人形と暮らしているので、今後の人生は割と幸せな方向で落ち着いてくるんじゃないでしょうか。
とはいえ、今後も劇薬本を探しては文句を云ったり時々掘り出し物を見付けて喜んだりします。
知っていることが多ければ多いほど楽しみが増えると同時に気難しくなっていきますが、良い物に出会えた喜びに更に深みが増すと信じている。