ロシア料理をちゃんと食べたことがないような…
読了。
米国への亡命ロシア人によるロシア料理エッセイ兼レシピ本。語り口も言葉選びも軽快。手の込んだロシア料理(ロシア料理は手の込んだものしかない?)は、どれも美味しそう。本文のレシピはざっくりだけど、詳細(だけど大量にできちゃう!)なレシピもあるので嬉しい。
延々と語られるロシア料理の話にソウルフードなるものはこういうことか!という気持ちになる。
亡命ロシア人おっさんがウォッカを飲みながら「わかって亡命したけどよぉ、メリケンの料理は不味いんだよ!故郷の料理はこうこうこうでな…と、いうかメリケンが語るロシア料理が間違っているんだけどよぉ、赦されるなら串刺しにしてやりてぇなぁ…」と語っているようなそんな本。
グルメを自慢したり、食べ物の蘊蓄を語ることで何かを誇示するタイプの文章や人は苦手ですが、この本は食べることに生活やその人個人、民族に深く根ざしていて、これは久々にヒット。
上半期に読んだ本の料理枠1位が『胃袋の近代』でしたが、下半期暫定1位は『亡命ロシア料理』かな。
あと、メンチカツについて熱く語った章があったのが収穫でした。ロシア人もメンチカツは好きなんですね。
コロッケ以上、とんかつ未満…しかし、丁寧なメンチカツになれば好かれることもあるんじゃないかと思ってので、ふふっとなりました。
翻訳者あとがきによると翻訳も大変だったみたいだけど、各章のタイトルが愉快なので少しだけ。
「お茶はウォッカじゃない、たくさんは飲めない」
「魚の叫び声」
「メンチカツの名誉回復」
「スメタナを勧めたな!」
「食いしん坊に乾杯!」
…ね、米原万里(ロシア語通訳、翻訳者)とコルピクラーニ(北欧のメタルバンド)の変な邦題を合わせたような素敵なタイトルばかりでしょ?
そして、魚の声はクトゥルフが元ネタかな。