衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

2023年1月1日

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

動画志向の世の中なので、文字を、文章を読むのが好きな人ってどのぐらいいるんだろう…と思うのですが、私自身が文字で伝えるというのが好きなのでのんびりやっていきます。

ずっとやってみたかった映画モチーフのお年賀画像。

うさぎぐらいしか年賀要素がないのですが、今更明るい方向に寄せることなんてできないので、マンディアルグ「仔羊の血」×ホラー映画のDVDジャケットでありがちな感じで作りました。チェーンソーと皮の仮面なので大好きな映画『悪魔のいけにえ』に寄せられたのが嬉しい。

アプリが充実しているので、それなりに出来るものなんですね。時間がかかったのは切り抜き作業でした。

 

すぐに消えたくなるので、抱負は「病まない、しなない」以外、あんまり思いつかないのですが、やりたいことを思い浮かべるとそれなりにしてみたいことはあるので、今年は少しずつ充実させていきたいです。

東京阪ツアー「ストリップとお人形〜澁澤龍彦的なものっていっておけば通じる趣味嗜好〜」

思い出の振り返りとして、久しぶりの日記です。
連休中は大阪・京都を楽しんできました。
後の東京の話しにもつながるので、東京の事も合わせて3日分の話です。

  • 5月2日東京→大阪(宿泊は京都)
  • 5月3日京都(そして帰宅)
  • 5月7日東京
続きを読む

久しぶりに人形遊び

今週のお題「雛祭り」

雛祭りは人形町にある寿堂のお菓子を買うことにしているので久しぶりに人形遊びをしました。

f:id:hikimusubi:20210305001305j:plain

りーぬが物欲しそうな顔をするのはなぜだろう…ずいぶんと人間味が出てきた気がします。

あまり人形写真もアップしなくなっていましたが、針仕事を復活させたので、今年こそはりーぬの服を縫ってあげたいです。

 

日本の人形の歴史と扱いについて『図説 日本の人形史』『人形歳時記』『日本人形史』

最近の人形×読書の成果報告です。

全て人形の吉徳(人形メーカー)に関連した本です。

図説 日本の人形史

図説 日本の人形史

  • メディア: 大型本
 

浮世絵や人形の吉徳に残る資料で観る日本の人形の歴史。

図版が中心ですが、人形に注目して浮世絵を集めているって意外と見掛けないので新鮮。人形問屋間の季節品で著者(11代目山田徳兵衛)の父が研究もされていたので羽子板の項目あり。

 

紙の人形なんか出てくると、「人形って立体だと勝手に思っていたけど、人の形って括りなんだな…」と思うなどした。

戦前のデパートの様子や竹久夢二の話、人形使節も付言されていて、ニューヨーク市長からお使いでやって来た等身大の人形ミスター&ミセスアメリカに対して日本も等身大の少年少女の人形・富士男と桜子を作ったのは初めて知りました。

 

あと戦前は吉徳協力の人形病院なるものがあり、退院の際は原則は引取だったとのこと。解説で「お迎え」という言葉が使われていたけど、これは普通にお出迎えの意味だね。他の図版で人形の販売や購入の様子の物を見返しても「(買い)求める」という表現でした。

他には戦争中の話で、フランス人形がトヨサカ人形という名前に変えられたり、人形に使う生麩糊(桐塑を練るのに使用)が入手困難で手に入れても食べてしまったという話題が気になった。

 

人形の吉徳資料室長による季節ごとに語る人形、時々昭和初期の浅草橋。

戦前に国防色が強い銃後人形なるものを売り出すも売れなかった事を振り返って「人形は夢を買うもの」と書いているのが印象に残った。リアルでなくてもいい、買うことができる夢なのだ。

人形が美術の世界に入るようになった話が一番興味深い。昭和2年の答礼人形の作成がきっかけとなった人形芸術運動があって、昭和11年に帝展入選、戦後人間国宝も出て来て…あたりかな。大規模な人形の美術展では昭和61年に近代美術館の工芸館での展示について触れられているけど、工芸かー。

この本自体は平成8年(1996年)に出ている。工芸ではなくもっと美術よりだと2004年の東京都現代美術館での球体関節人形展かな。それを思うと私が好きな人形は現代アートコンテンポラリーアートのあたりかなーと思うなどした。

 

吉徳の山田徳兵衛による日本の人形の歴史。昭和17年に刊行されたものに補足した昭和36年発行の本が元になっていて、一番力が入っている&頁が割かれているのは雛人形について。人形芸術運動の表記はないものの、それっぽい話はある。ちなみに青い目の人形関係の記載はなし。

ボリュームある内容を読みながら、相対的に自分が興味がある人形というのは人形の中でもかなり狭い所にあるんだな…と痛感するなどした。
私は動かせる、髪の毛がフワフワしている(素材にメリハリがある)などの要素が好きなのだけど、そういった人形は市松や昭和初期のあずま人形が近いのかなと。

 

もう少し私が好きな人形に近いのは関東大震災以降にフランス人形作りが東京の女学生の間で流行ったこと、後に婦人たちの間で新しい日本人形の創作が始まった…というあたりかな。この辺は竹久夢二も関わったそうだけど、竹久夢二は人形に興味があったぐらいしか書いていなかった。

意外と中原淳一に関する記述がないんだよねぇ(人形、作ってたよね?)。
あと、人形の専門家は男性が多く、アマチュアは女性が多いというのも、人形なるものが芸術か工芸かそれとも現代アートなのか評価が分かれる部分なのかな。

ただ人形作家の一部の芸術的意欲と作品は彫塑作品に近付いて来ているとのこと。そのことを「人形的なかわいらしさはぬぐい去られようとしている」と書かれている。彫塑と人形の線引きとして明確なことは著者は書いていない。

先に『人形歳時記』で「人形は夢を買う物」とあるので、愛せる要素が大切だったり、人形的なかわいらしさとあるので「かわいらしさ」はやはり要素として大切かなと。

 

人形とは…な話が中心になったけど、著者は「私が人形についてうっかりしたことを言うと、それがそのまま定説となってしまうことがある。よほど慎重にしないと、後世史家を誤らしむる結果になるよ」とはにかんだように語っていたとのこと。

影響力はあるけど、云っていることはそんなに正しくなかったり、変な事を書いて出版している人たちはこの言葉を聞いて反省して欲しさしか無い。本当に。

このところの人形×読書『人形(書物の王国)』『人形は語らない』『月刊アートコレクターズ4月号』

このところの人形×読書の成果です。

読了。

アンソロジー書物の王国シリーズの人形の巻。

ホラー寄りの扱いを受けているセレクトが多いので、そんなに掘り出し物!という気持ちにならず、結果として、自分にとって人形が如何にパーソナルなものかを思い知るなどした。

一番よかったのは種村季弘「人形幻想」。

「あどけないのに無気味、可愛らしいのに怖い」とまとめ、「無気味な背後の予感があればこそ、底なしの深層からの反射が愛らしさを引き立てる」…とある。他にも「倒錯美」「肌の下に湛えられている滅びの予感」って耽美すぎて照れちゃう!

種村季弘は彫刻に関しては「古典的な美の規範に支配され~」とあるので、人形とかなり区別している。似て非なるのである。ただ、この巻は像の話もあるので「にんぎょう」というより「ヒトガタ」の趣なんでしょう。

 

好き嫌いではなく印象に残ったのはアンリ・ド・レニエマルスリーヌ」。

印象に残った理由は語り手である主人公がクソ面倒臭そうだから。

収集癖があるオタクの夫と夫のコレクションを捨てそうな女の夫婦の話で、夫の一人称で書かれているので、わかりにくいけど…すごくモラハラクソ野郎臭がするんですよね。

まず主人公が「ぼくちんは空想好き!高尚な趣味を持っているのに妻ちゃんわかってくれない!だから妻ちゃん、頭を良くしてあげよう」みたいな所があるのだけどコミュ力というかプレゼン能力無さそうなんですよ。オタクだから仕方がないとかではなく、奥さんが美人だから選んだみたいな感じでコレクションの1つぐらいにしか思っていなかったんでしょう。

きっと「そんな事も知らないの?」などモラハラ発言するんだわ…だから、奥さんがあんな凶行に走るのではなかろうか?(注意:これらはすべて個人の偏見です)

奥さん、ベネチアを「水の真ん中まで来て建てられたこの不都合な都」呼ばわりしていて、これ、逆に別の才能があるのでは…。

そして、夫、コレクションも置きっぱなしくさいし、それで新しくてかさばるもんを買ってきたら奥さんキレますよ…。

読み方としては主人公の肩を持つのが正しい、オタク最高、オタクにとっての救い!みたいな捉え方をしたほうがいいのでしょうけど、同じ趣味でモラハラしてくる人物と趣味が違う人間的に好ましい人物だったら断然後者を選ぶ。

 

 

読了。

人形の本かと思ったら、人が作る、関わるものは皆人形みたいな考え方のマスメディア論。

著者は精神科医なのだけど、ザ・フォーク・クルセイダーズのメンバーでもあった人。本の構成が歌っていた人みたいな感じで進むのだけど、「帰って来たヨッパライ」でわかった。あの「おらはしんじまっただ~」のアレ。

本文に出てきた「これだけ情報があるんだから、みんな吟味するしかない。現在のところ、万人受けして、みんなに愛されるものしか情報は提供されないという傾向があるわけですから」って良い言葉だと思うし、自分が好きな物を見つけるのにはかなり数をこなさないといけないこともあるよなぁ…となるなど。

ただ、この本、肝心の私が好きな方の人形の話はほぼ無かったです…。

 

ARTcollectors'(アートコレクターズ) 2020年 4月号

ARTcollectors'(アートコレクターズ) 2020年 4月号

  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: 雑誌
 

今回、創作人形特集なんですよ。

創作人形の特集って最近はほぼ見ないので嬉しくなっちゃう。作家のセレクトで私は「ん?」と思う人ももちろんいるけど、たくさん見ることで何が好みかわかったり、グッとくるものなので、たくさん観て自分にとっての一番が見つかるといいですよね。

コレクター向けの雑誌なので各作家作品に目安の値段もあるので、売っている買えるものなのが分かりやすい。

あと人形のコレクターさん紹介もあるけど、アートコレクターズだからやっぱり数をお持ちの方だった。

人形を愛でるのは数が多くて当たり前のように感じる人もいるかもしれませんが、人形好きでも私みたいな少なく所有して大きく愛でる人もいますよ…と云っておくなど(たくさん持っている人が小さく愛でているとは言っていない)。

人形と生きたあの頃『人形大使』『禁断の百年王国』

人形関係の本を読みました。

人形大使―もうひとつの日米現代史

人形大使―もうひとつの日米現代史

 

読了。

渋沢栄一も関わった日米人形交流うち日本からアメリカへ送られた答礼人形について。メインは著者が現存する答礼人形すべてを観てのレポート。

やっぱり人間自分でしっかり動いてこそだよね…と作者の行動力に感動した。

日本へ里帰りして展示された人形への感想が「とてもかわいい」「穏やかな顔」「うれしそう」と好評だったり、人形が出国前行ったイベントに参加した人が思い出を語ってくれるなどポジティブな話題が嬉しい。

人形は怪談で消費されまくった存在だけど、顔立ちは皆可愛らしいのよ。

著者が答礼人形への思い入れが端々に感じられる。人形に語らせる文章が登場して、ふふっとなる所もある。人形は持ち主をお母さんっていうのか…私も一時期、うちの人形にお母ちゃんって呼ばせていましたけど、そういうもんかー(友情人形で「ママー!」って云うのがいるからだと思うけど)。

 

答礼人形のうちミス愛媛がハリケーンで喪失、現存していたのはぽっくり一足だけで、別の答礼人形研究者が「日本で自殺する人は履物をぬぐ」と伝えたところ、人形を所有していた方から「それはアメリカもです」と返されて沈黙してしまった話がダークツーリズムしていて、しんみりした。

 

禁断の百年王国―少女人形論

禁断の百年王国―少女人形論

  • 作者:増淵 宗一
  • 発売日: 1995/07/01
  • メディア: 単行本
 

読了。

明治期の良妻賢母教育のために少女には人形…から始まった少女と人形について。

著者はリカちゃん人形の研究者なので、もちろんリカちゃんの話題も多い。

この本は25年前の本で最後に「かわいい価値は拡大するのか、新たな価値観が生まれるのか…」とありましたが…前者かな。

本文に出て来たジェニーの服の雑誌は母がバザー用にジェニーの服を作るから…という理由で我が家にありました。私のジェニーはなかったのに。

人形以外の話題としては、かわいいの拡大として言葉で不気味+キュートで「ぶキュート」という言葉が出て来たけど…そんな言葉、あったの?

話題が脱線しましたが、人形と少女では、源氏物語で10歳の紫の上が人形遊びをしていて窘められる話があり、小道具も豊富に持っていた話があった(これは知らなかった)。他国でもドールハウス(1/12サイズ)の話もあり、お姫様はミニチュアや人形が好きとまとめられていて、ふふっとなった。雛祭りは江戸時代から商業ベースで進められていて、幕府が「雛道具が華美になりすぎないように」とお触れを出したそうなので、熱心な人がいたイベントの様子。 明治期に教科書で雛祭りを持ち上げたり、百貨店がこぞって雛人形を売り出した話もあったので、人形含むミニチュア的なものは商機なのだな…という気持ち。

人形作家の人の事『人形作家』

時間を置いて再読すると発見があるね。 

人形作家 (中公文庫)

人形作家 (中公文庫)

 

読了。

人形作家・四谷シモンの自伝。だいぶ昔に講談社新書で読んだことがあったけど、こちらは文庫版。書き下ろしで金子國義がお亡くなりになった事について触れている。私の知識が深まった結果、交友関係の記述が嬉しい。宇野亞喜良とか金井美恵子とか。

 

だいぶ前に読んだ割りには父親から絵の具を貰って捨てた話とベルメール人形を知って今までの人形の材料を捨てた話は覚えていた(後者は有名なのもあるけど)。

ベルメールの動く、動かせる人形に関連して内藤ルネが球体関節のアンティークドールを持っていた話があり、これは覚えていなかった…となりました。アンティークドールは管轄外なもので…あと、レザーやクロスボディだと思っていたよ…。

あと本当に個人的ではありますが、北区王子付近の話は「だいたいあの辺かな?」と見当が付くのがなんだか嬉しい。

それだけ以前読んだときよりも知っていることが増えたんだな…。

 

フランス滞在中のエピソードで、掃除をしてくれた女性にイミテーションの真珠のネックレスをプレゼントしたら、買い付けたアンティークドールに名前を付けてくれた話が出て来た。

名付けなるものは人形の個性の見分けが付くから出来るもので、「人形を愛するということは、そういう一見当たり前のなんでもないところに現れてくるのだと実感しました」と書いてある。人形への愛情は人それぞれだけど、こういうのはなんだか嬉しくなります…私は人形と暮らしているから。