衛生ゴアグラインド

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おそろしあ雪山『死に山』

涼を取るように。

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

 

読了。

すごくいいタイトルですね。雪山ホラー映画風のタイトルではありますが、実際は冷戦下のソビエトで起こった遭難事故:ディアトロフ峠事件の謎に米国人ドキュメンタリー映画作家である著者が挑んだ話。

日誌からわかったり推測される過去と著者の行動の現代がほぼ交互に出て来る構成はドキュメンタリー映画的。

途中で離脱した生存者や、遺族との対面もあるも、生存者との会話で何かつかめるかと思ったら記憶違いがあり陰謀論に染まっていたという結果になり、人の記憶や思想って簡単に変わるもんだな…ということは今後も覚えておきたい。

 

写真は豊富だけどショッキングなものは殆どないので安心。 前情報で遺体の一部がなくなっていたという話があったけど、きわめて不自然になくなっていたわけではなく、動物に食べられた説や腐敗説を否定する要素は少なかった。ちょっとショッキングなピックアップをされたんだなぁ…実際、ショッキングなんだけど。

最後に著者なりの仮説も出て来るし、それは当初の発表「未知の不可抗力による死亡」に限りなく近いものだし、死者の尊厳を守る結論を導き出していた。しかし、衣類から検出されたアレの謎が解けていない…時代と遭難の結果が相まってとても厭な憶測を生む事件だなぁ…というのが事件の感想。

 

あと、著者がアメリカ人なので、事件当時のソビエトについて説明がちょいちょい入るのだけど、これがロシアに詳しくない身には嬉しい。自国の人間が書き忘れそうだったり、感慨深くなったり、あるいは翻訳者の注釈がいっぱいついて読みづらいとかはない。レントゲン写真のレコードの話とか、レコードの機器を痛めつけるレコード、警告が入ったレコードなど、度々私の観測範囲で話題になる話が出て来て知識が繋がる思い掛けない喜び。

ソビエトというとどうしてもアメリカ側からすると敵だったこともあり、悪い印象の方を持ちがちではあるのですが、本文中にも嫌がらせをされたのでは?というエピソードが少しだけあったり、強制労働施設があったことに触れたりする一方、事件に巻き込まれた大学生たちの生活は当時の勤勉でそして青春を謳歌する学生そのもの、そして男女平等というか(ひそかに人気の女子はいたけれども)人として協力し合う様子などが人間関係として良好な気持ちになる。

他にも著者とロシア人たちとの交流が妙にほんわかする。英語を練習して歓迎してくれたりとか、食べ物でのもてなしなどロシアのいい面もあり、物事は出来るだけ多角的に判断したいと思うのですが、著者にそこじゃない!って思われそうなところで癒される本でした。