読み応えある本が知れるのが嬉しい。
裁かれる大正の女たち―「風俗潰乱」という名の弾圧 (中公新書)
- 作者: 清永孝
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1994/04
- メディア: 新書
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読了。
大正時代の事件や新聞の投書、身の上相談からみる女性が如何に差別されていたかということ。自分にとって都合が悪い、理解できない女(特に若い女)はとにかく叩きたいんだなぁ…というもの。100年ほど前とはいえ、現代に通じる話もあり根深さを感じずにはいられない。
結婚したければ男性は性病検査をしろ!っていったら女尊男卑とされた話が出て来たけど、流行だった近年の梅毒も女性の検査を促す方向ばかりだったのを思い出すなど。大正の男性の性病にかかっていない自信はなんなんだろ?
他には性に関連しては身の上相談で、子供が沢山出来て困っている貧困家庭の女性の投書への返答が「避妊して生活が楽になっても国が滅んだらどうする。避妊を考えるなど間違い」というものだった。アフターピルを安価で解禁したくない考えってこれもありそう…と頭抱えた。
一方で、恋愛に関しては大正に比べると自由度が上がった気がする。伯父からの手紙を恋人からの手紙と勘違いした教師が女子生徒を詰めまくってそのコが発狂してしまった話が出てきたり、大正時代の新聞記事で好きでもない人と結婚したくなくて、逃げて結局捕まった女性の話が「まずまず目出度く結婚式をすませたり」と書かれていてぞっとした。人の気持ちは関係なしだぜ!…っていうのはあんまり聞かないから(あったらごめんね。わからなかったらそれは私が世間知らずなだけです)。
大正というのは私が大学の時に多少調べたことがある時代なのだけど、当時の教育…そもそも女学校に行ける人間は少数で、高等女学校令も良妻賢母教育なので女性が学べることに制限をかける酷い文章なのを改めてこの本で知る。
私が大学で女学生の事を調べていた頃にどう思ったかを覚えていない。本当に必要なことしか調べず、こうした歴史背景の事はおざなりだったのかも。
ただ、私の思想もだいぶ変わったんだろうなぁとは思う。生まれ持って変えられないもので不当な差別があればそれは怒りを感じるから。
一方で大正・昭和初期の女学生時代を数少ない幸福な時間のように捉えていたのはあながち間違いではないかもしれない。
結婚したらどんなに別れたい不遇なことがあっても、新聞の身の上相談では「ご辛抱なさいまし」と云われるだけなんだから。