衛生ゴアグラインド

人形を愛で、本を読み、肉を食べる

運が悪かった『犯罪』

母に薦められたシーラッハ。今度はデビュー作の方を読むなど。

犯罪 (創元推理文庫)

犯罪 (創元推理文庫)

 

読了。

犯罪にまつわる短編集。自分から地獄の釜の蓋を開けるような奴もいれば、運が悪かったとしかいいようがない事もある。…というのは序文に出て来た裁判官だったおじの手紙「物事は込み入っていることが多い罪もそういうもののひとつだ」に集約されている。

この手紙、厳密には遺書に分類されそうなもので、作者の伯父は戦争で左腕と右手を無くすも裁判官として活躍、しかし最後は散弾銃で頭を吹っ飛ばして自殺というものだった。本編も良くわからない殺され方をしたり、追い詰められて犯罪を犯す人が出てくる。

読み終えると運良く犯罪を犯さずような事態に陥らずに済んでいるというだけな気がしてくる。序文でも「私たちは薄い氷の上で踊っているのです」と書き出し、氷が割れた瞬間に作者の興味があることを書いているのですが、春日武彦の精神の病気は運が悪かったと云っていたのを思い出す。

この短編集で一番好きなのは人が死なない「棘」という話。

古典美術で出てくるモチーフである「棘を抜く少年」にとりつかれて他人の靴に画鋲を仕込んで棘を抜く人を量産していた男が出てくるのだけど、今までに読んだことがない変態で、ぐっときた。 こういうのでいいんだよ…どういうのだよっていわれそうだけど、殺人や性での変態は目新しいものに出会えないので、いっそ殺しも性もあんまり絡んでいなさそうなものの方が新鮮というそういう意味です。