衛生ゴアグラインド

人形を愛で、本を読み、肉を食べる

何某かの傾向はある『美人論』

本を読むのはやっぱり楽しい。好きな語り口の作家が見つかるともっと楽しい。

美人論 (朝日文庫)

美人論 (朝日文庫)

 

読了。

明治以降、美人はどのように論じられてきたか。

明治期に「衛生美人」という美人観を大日本私立衛生会が提唱するもその美人観が受け入れられず、不美人の描写として二葉亭四迷浮雲』に「生理学上の美人」と書かれる始末…というのに笑ってしまった。

泉鏡花「最近の美人画は肌の色が健康的すぎる。俺は病的でも良いから色白の方がそそる(意訳)」

小杉天外「痩せて色白で温和しい女性こそ美人。健康的なのは遠慮しときます(意訳)」

…みたいな感じの価値観に対抗するのが「顔はどうでもいいから臀腰壮大」な女性が衛生美人だったそうです。

しまいには病的な感じのタイプを結核好(けっかくごのみ)と決めつける官僚もいて、結核は美人がかかるものという向きがあった話へと展開。

谷崎潤一郎『異端者の悲しみ』に出てくる「肺病になる女は美人」という趣旨の会話が引用されていました。

結核の女=美人という価値観があったようだけど、「結核患者の性欲はすごい」の話はなかったので、結核の女=えっちな美人という話は無かったです。とはいえ、こういうところから当時の価値観が見える、そういったものだったのでは?と推測されるのは面白いですね。

 

話が脱線しますが夢二式美人がもてはやされたのを思うとみんなちょっと病気っぽい感じの女性を好む傾向があるんでしょうね。かくいう私も一番好きなのは色白細身ではあるのですが、様々な美女観が存在しているので、美人はこれだというよりも、個々になにがしかの美を持っており、そこを努力することで何かしらの美人になりえるのではないかという方が希望があります。

たとえそれが美容業界の商業的戦略であったとしても、自分は不美人だからと悩むよりはよっぽど良いかと思うんですけど、私も醜形恐怖思しき時代が長かったからなかなかどうにも。