衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

綺麗に終わるのは難しくとも『特殊清掃会社』

ミニマリズムについての本が片付けへのモチベーションが上がるといったら、友人から「私はゴミ屋敷とか特殊清掃が好き!」と云われたので。 

読了。

特殊清掃に携わる方による現場の話。こういう本を読むと掃除へのやる気がでますね…。

さすがにゴミ屋敷レベルの散らかし方はしたことがないのですが、今後も計画性を持って日々のゴミを捨ててため込まない…と誓うなど。

割腹自殺者の部屋の話が出て来るのだけど、一度で死にきれず包丁を変えて二度目でお亡くなり…という文章をみてやっぱり切腹はなかなかしねないのだな…となった。

そしてご遺体についての話も当然出てきました。畳に染み込んだ体液で皮膚が大変なことに!となったり、死臭というのはたとえようもないもので、大変強いとありました。

フィクションで死体の描写が雑だと話に入っていけないマンがさらに強化されてしまった…。

2019上半期ベスト10冊

記憶の新しい範囲の方が圧倒的有利な気がするので、忘れないために、そして上半期ベストと下半期ベストを戦わせて年間ベストを作る気持ちで上半期ベスト10を作りました。

上半期183冊中、面白かった本は下記の通りです。読んだ順に書きました。

 

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好きな作家にサインを頂く『「サイコパスの手帖」(洋泉社)刊行記念 春日武彦先生&平山夢明先生トーク&サイン会』

昨日6/28は『「サイコパスの手帖」(洋泉社)刊行記念 春日武彦先生&平山夢明先生トーク&サイン会』に参加しました。

現役作家で文章が好きな作家No.1の春日武彦先生と現役作家でエグみとエンターテイメントの両立でNo.1の平山夢明先生ですので、楽しみにしていました。

特に春日先生は初めてお目にかかるので、著作が好きであることなどをお伝えしたところ、ニコニコ笑顔で新刊の予定を教えてくださり、更に好きになりました。

平山先生はサービス精神旺盛で、サイン会の最中でも会場に向けてトークを展開していて、すでにトークイベントが始まっているかのような気持ち。

今回はサイン会→トークイベントという流れでトークは聞いた人のお楽しみ!というほどに過激な話題が盛りだくさんでした。

 

端的にレポートしますと

・映画『カニバ』から某S川氏の話(春日先生は目撃したことがある、平山先生は過去に交流あり)

・春日先生は変態的なものが治療できるという考え方に否定的

・トラウマ映画は2人共にあまり被らず 春日→真面目 平山→キチガイ で別れた。

・平山先生「真面目な人が悪いこともしていないのに、糸くずみたいになるのが好き。自分の中に幸せが無いからそういうのを見ると安心するし、逆に幸せな話はドキドキする」(意訳)と語る。

・海外の話。平山先生は米国の愛国心が異様に強すぎるホテルに行った話、春日先生は

 グアテマラ寄生虫由来の失明の患者さん相手に視力検査をした話。

・平山先生が出会ったサイコパスっぽい編集者の話。

・お客さんより質問「今まで出会った一番サイコパスな人は?」

平山先生→「金に汚いやつ。俺たちへの給料が3,4ヶ月に1回!春、夏、秋、冬の各1回って、なにこれ?季(節)給?」

春日先生→全員犯罪者の閉鎖病棟にいた電話ストーカーの男。とにかくしつこかった。

・お客さんから「多頭飼いはおかしいという話がありましたが、私は猫7匹飼っています。気が狂わないようにするにはどうしたらいいでしょう?」という質問に対して、春日が「見分けがつけば大丈夫」と返答。

・映画『ダイナー』には平山先生はでていない。

 

他にも色々ありましたが、だいたいそんな感じ。主に平山先生が喋って、春日先生はニコニコ頷いたり、時々ぼそっとツッコミを入れたり…と云う感じでした。

よい日だった…。

 

サイコパスの手帖

サイコパスの手帖

 

たぶん、今年の面白かった本に入れる。

運が悪かった『犯罪』

母に薦められたシーラッハ。今度はデビュー作の方を読むなど。

犯罪 (創元推理文庫)

犯罪 (創元推理文庫)

 

読了。

犯罪にまつわる短編集。自分から地獄の釜の蓋を開けるような奴もいれば、運が悪かったとしかいいようがない事もある。…というのは序文に出て来た裁判官だったおじの手紙「物事は込み入っていることが多い罪もそういうもののひとつだ」に集約されている。

この手紙、厳密には遺書に分類されそうなもので、作者の伯父は戦争で左腕と右手を無くすも裁判官として活躍、しかし最後は散弾銃で頭を吹っ飛ばして自殺というものだった。本編も良くわからない殺され方をしたり、追い詰められて犯罪を犯す人が出てくる。

読み終えると運良く犯罪を犯さずような事態に陥らずに済んでいるというだけな気がしてくる。序文でも「私たちは薄い氷の上で踊っているのです」と書き出し、氷が割れた瞬間に作者の興味があることを書いているのですが、春日武彦の精神の病気は運が悪かったと云っていたのを思い出す。

この短編集で一番好きなのは人が死なない「棘」という話。

古典美術で出てくるモチーフである「棘を抜く少年」にとりつかれて他人の靴に画鋲を仕込んで棘を抜く人を量産していた男が出てくるのだけど、今までに読んだことがない変態で、ぐっときた。 こういうのでいいんだよ…どういうのだよっていわれそうだけど、殺人や性での変態は目新しいものに出会えないので、いっそ殺しも性もあんまり絡んでいなさそうなものの方が新鮮というそういう意味です。

一家族を透明にする『消された一家』

海外のシリアルキラーコレクターが「海外の殺人鬼だから集めることができた」と云っていたけど、私もその気持ちはよくわかる。 

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

 

読了。

北九州連続監禁殺人事件のルポタージュ。

一家を洗脳、人体に電気を通す、格付けによる虐待の集中、排泄の回数制限、リラックスできない姿勢を取らせる、排泄物を食べさせる、殺させて人体解体、入念な死体処理…人間の尊厳を地面に強く叩きつけてぶっ壊す所業に恐怖を覚える。

フィクションは平気だけど、現実だとやっぱりしんどいですね…。

今回読んだ文庫版だとDV被害者であり減刑された被告の手紙を収録。他のDV被害者と交流を持つなど刑務所の中で人生をやり直している様子だけが数少ない明るい話になっている。

 

騙されないぞと構えるよりも騙されると思って身構えること、離婚したら結婚しようはだいたい嘘であること、暴力を振るわれたら逃げることは人生において覚えておきたい事だなぁ…としみじみする。

DVを受けた女子って意外と身近でいるけど、正常な判断を失うし、私はDVではないものの、ハラスメント職場ばかりいたので、正常な判断力はなかったですね…。

若くて病んでいたあの頃『17歳という病』

好きな作家の文章を読む楽しみ。

17歳という病―その鬱屈と精神病理 (文春新書)

17歳という病―その鬱屈と精神病理 (文春新書)

 

読了。

著者による偏った若者論。

ひきこもりについてのところで学校をさぼった話を「こんなに楽しいことはない」「孤独の喜びを味わった」と書いていて、私の療養生活が楽しかったのも納得した(私はフリーの仕事と家事はしていたけど)。

若者特有の話で著者が若かったころにツェッペリンの1枚目のアルバムと2枚目のアルバムのどちらが好きかで人間性を判断していた話が出てきたけど、結局、いつの時代も若者は傲慢で一方的な踏み絵がまかり通る年代で、踏み絵は年代や集団、その時の若者に受けるものに変わるだけなんだなと思うなどした。ラルクorグレイ、ディルアングレイorピエロ、加藤まさをor高畠華宵松本かつぢor中原淳一…。

 

今回は著者:春日武彦の言葉へのこだわりがみえる回。「わんぱく」という言葉が大嫌い、父から差し出される葡萄パンの干し葡萄の多いところを「ああ、干し葡萄の鉱脈の鉱脈がある」と心の中で思っていたエピソードを読んでこの著者の文章が好きな理由を感じた。そう、言葉。

他にもゆらぎ岩が、今はもうないという文章に狼狽したとあったけど、岡上淑子の写真で紹介されていた作品が「所在不明」ってあって、なんだか恐怖に似た哀しさを感じたのを思い出した。あの気持ちが狼狽に当てはまるのか…。

出版順ではこの本より後の『「いかがわしさ」の心理療法』で語彙が貧弱故に言葉で言い表せぬ事象が増え、結果、社会から見れば歪な存在となっていくという話をしていたけれども、それのもう少し詳しいバージョンでもあるかな。

リアル17歳の時に読んでおきたかった気がするけど、斜に構えたダメな大人になった今だから面白いのかもしれないな…と時間が巻き戻せないなりに想っておきます。

サクッと採れる毒『罪悪』

珍しく人から薦められた本を読みました。

罪悪 (創元推理文庫)

罪悪 (創元推理文庫)

 

読了。

犯罪の話しかない短編集。語り手である私(弁護士)が登場するという共通点がある。

女は犯され、男は犯罪に走り、子供はいじめに遭う…暗い、暗いそんな話ばかり。

一発目の「ふるさと祭り」はバイトの女子が酔っ払ったブラスバンドの連中に輪姦されて、人間の尊厳を奪われる目に遭う上に後味が悪い結末を迎える。

その後もいじめ、強姦、冤罪、誤認逮捕など暗いながらも、するっと読める作品が続く。さっと採れる毒という感じがする。

小説として、嫌いではないけれども、複雑なのはこの本を薦めてきたのは母である。

なんてものを娘に薦めてくるんだ…。

私は母に「この本が面白かった」ということはあれども、性的な要素が多い本は避けていたのに、母はそんな娘の配慮を顧みずにこれである。

小説自体は面白かったので、母よ、あなたはえらかった!と思えども、それでいいのか?という気持ちになる。

漫画家の荒木飛呂彦が「ハッピーエンドを踏襲しつつ、ちょっと殺したい」という発言をしていたけれども、私も「ハッピーエンドだけど、ちょっと死んでいる方がいい」と思っているので、よってジョジョは楽しい。

それはともかく、基本は100%前向きではしんどいが、かといって全部暗黒でもそれはそれでしんどい。

最後に、我が母の大変暗い内面がよく表れた言葉を書いておく。

 

「どんなに前向きに生きていこうと思っても、つい後ろを振り返ってしまう。するとそこには長く伸びた黒い影があって、その影を見つめるうちに明るくキラキラとした前向きなものが疑わしく感じられてどうしようもなくなる」

 

…これ、娘に言う言葉かよ!