衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

春望物語

厄年ではあるけれども、酷いことが続く。

厄払いをしたのでこの程度だと思いたい。

 

今読んでいる本で李白杜甫の話が出てきた。杜甫漢詩「春望」は思い出せたものの、「国破れて山河あり」の後に「諸行無常の響あり」と平家物語をくっつけてしまったので、色々忘れているな…。

ちなみに先ほどの漢詩に続くこと言葉は「城春にして草木深し」が正しい。

ちなみに「城春にして草木深し」の後に「盛者必衰の理を表す」が出てきたので、とにかく平家物語が出てきておかしなことになっていました。

 

時々、昔覚えたことを思い出しては何かを確認するようなことをするのですが、これは自分の中のログを確認するような行為で結構好きだったりします。

 

そして諸行無常であるならば、私のこの厄の日々も開ける日がきっとくるのだ。

 

 

この本を読んでいます。

面白かったので、読み終えたらまた書きます。

幸せにしてはくれないが、己を律する『悪の箴言(マクシム)』

好きな作家の本を織り交ぜつつ読書の秋です。

悪の箴言(マクシム) 耳をふさぎたくなる270の言葉

悪の箴言(マクシム) 耳をふさぎたくなる270の言葉

 

読了。

心に刺さる辛辣な箴言たちをフランス文学者で話題が多岐にわたる著者わかりやすく解説してくれる本。鹿島茂の本はわかりやすく、内容は興味深く読んでいて楽しく、読んだ後にちょっと賢くなった気持ちになれるので好きです。

気に入った箴言を少し引用します。

 

「批評はしばしば一つの学問ではない。それは一つの職業(メチエ)であって、それは創意よりも健康を、能力よりも修練を、天賦よりも習慣を必要とする」

『悪の箴言祥伝社 P.161

 

「批評家には健康と修練と習慣が必要」ということですが、仕事も趣味もだいたいそんな感じですよね。量をこなさないと質の評価は難しいから。

 

「彼はチューリップの球根しか崇めない。さしあたって、その球根を、たとえ千エキュ出されたとしても絶対に他人に譲らないだろう。しかし、いずれ、チューリップがすたれて、カーネーションが流行ったら、そんな球根などただで人にくれてしまうことだろう」

『悪の箴言祥伝社 P.193

 

偏奇愛(キュリオジテ)の話で出てくる箴言。キュリオジテは「稀であって、しかも流行っているある種のものに対する情念」だそうです。

そしてここから展開されるエッセイがアイドル・グループの中で地味で目立たないアイドルに熱を上げるオタクの話に展開していきます。

枠組み(今回の場合はアイドル・グループ)の中でなければレアさやユニークさへの熱狂も情念もないとのことで、追っかけとは、消費であり、自己実現という話にまで発展します。

他にもいじめをなくすにはそれぞれの得意分野で自己愛を満たしてやるシステムがいいけど日本じゃ無理、独裁者を選んでしまう理由は周囲の自分よりちょっとだけ幸せな人が妬ましいから、幸せも不幸も自己愛に見合う分しか感じないなど、人間とこの世が厭になると同時に身につまされます。

が、著者がそれなりに結論を用意してくれるのが親切。

 

あと今回学んだこととしては鬱の克服には外国語習得が良いとのことなので、今度鬱になったら思い出したいです。

 

あと最後に覚えておきたい箴言を一つ。

「ささいな屈辱などやりすごせ。そのほうが賢明だ。たとえ、復讐の喜びがどれほど大きくても、我慢することだ。掛け替えのないもの、すなわち自由でその喜びを買おうとすることは、あまりにも高い買い物になる」

『悪の箴言祥伝社 P.137

 やみくもに「復讐な何も生まない」と云われるよりはわかりやすいと思います。

洛中洛外冷戦『京都ぎらい』

怨みはないが、ありがたがりすぎるのはどうかと思うんだ。

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

 

読了。

京都市の洛外出身の著者による京都論。洛中の人に洛外出身をバカにされたという怨みをパワーに憎しみをやる気にして書かれていますが、楽しく読めるし、やっぱり京都はそうなのか…と思うなど。

安くて美味しいものは大阪にあって、大阪だけが京都をバカにできるそうです。

隣の滋賀はどうなんだろ?滋賀出身の恋人に聞いてもコメントは得られませんでした。

よくバラエティでは「琵琶の水を止める」なんて話もありますけど。

 

終盤は日本史絡みの話になるのですが、天龍寺後醍醐天皇の怨霊化を恐れて作られた寺という話を読んで「後醍醐天皇の怨霊で日本転覆を目論む陰陽師とかいそう」と思いました。そんな帝都物語ならぬ京都物語(仮)があったら教えて下さい。

 

精神科病院のちょっと事件ありの日常『緘黙』

好きな作家の本を選んで楽しいと嬉しい。

緘黙―五百頭病院特命ファイル (新潮文庫)

緘黙―五百頭病院特命ファイル (新潮文庫)

 

 読了。

3人の個性的な精神科医が15年間喋らない患者の治療をするという内容の小説。作者の他の著作同様、症例や文学作品がところどころ引用されていて、小説になってもやり方はほぼ一緒。

細かい描写が心地よく、3人の精神科医の描写に過去の著作や作者本人を思わす面もあって、この作家が好きで他の作品も読んでいたから面白いというのもあるかも。

 

蟹江医師の実家の鉛筆メーカーが出している「知恵の木鉛筆」についての話が好きなのでちょっと引用。

ナイフで削ると、この製品特有の香りがほのかに漂い、それはいかにも知性とか書物とかノスタルジーを連想させ、それどころか官能的とさえ思える匂いなのだった。それにモスグリーンの軸木とキツネザルのマークのチャーミングなこと!文筆家、画家、建築家など多くの人々にこの鉛筆は愛された。仕事を始める前の儀式としてまず知恵の木鉛筆をゆっくり削る、という人種が結構いる。

 といったわけで零細メーカーながら伝統的な製品としてこの鉛筆は指示されてきた。高価とはいえ、所詮は鉛筆なので、貧しい芸術家たちへの心の潤いをもたらしてもこれたのだろう。

 

医師たちが過去の著作を思い出させるので、思い出した過去の著作などを。

津森医師

優しく接してくれるような医師。比較的メインのように感じるし、作者に一番近い印象。声が良く、過去に食べた料理の味を再現できるという能力あり。家族仲はあまりよくなく、離婚歴あり。

「キモさ」の解剖室 (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)

「キモさ」の解剖室 (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)

 

中学生向けの本。この本で「患者さんは自分がなっていたかもしれない姿」語るのが津森医師とだぶります。

 

 

大辻医師

東大出身のエリート医師。背は低いが男前。メディアへの出演も多数ながら、負い目のある過去もある。

華やかな職業の女性をパートナーに選びがち。今はアナウンサーの女性と付き合っている。食へのこだわりはあまりない。

鬱屈精神科医、占いにすがる

鬱屈精神科医、占いにすがる

 

大辻医師はこの本に出てきたエピソードを思わせる話がある。

著者が「容姿が悪いので自慢の息子になれなかった」と嘆くので、顔の良い大辻医師のエピソードに採用するのは丁度良いかなと思いました。

 

蟹江医師

車を乗り回したり、リコーダーを吹くのが趣味。文学少女ペンネームで作品が乗ったこともあるけれどもペンネームは教えてくれない。スエロニスム・ボス「愚者の治療」を控室に貼っている。

 

幸福論 ―精神科医の見た心のバランス (講談社現代新書)

幸福論 ―精神科医の見た心のバランス (講談社現代新書)

 

 

斜に構えた話ばかりなのですが、珍しいものを見たことを世界の仕組みを観たと表現するなど「確かにそれはちょっと嬉しい」と思う話が多々ある。 独自の楽しみを持っている蟹江医師はこの本のイメージが強いかなと思いました。

自己文章愛の遍歴

ブログを書くのは数えたら10年以上続いた趣味になっていました。

途中で書かなくなった時期もありますが、完全に辞めずに復活しているあたりは続いているといえるんじゃないでしょうか。

過去のブログと傾向を自分用にメモしておきます。

 

「Eccentric Gorey」2006-2007

当時のバイト先の宣伝ブログ。店の事やイベントの事を書いていました。

消すときに「ファンです。文章は続けてください」という感想をいただけて嬉しかった記憶があります。

タイトルはエキセントリックな人とバイト先のオーナーに云われたこととオーナーに勝手に付けられたあだ名を少し変えて付けました。

 

「My Sweet Fanny Adams」2007-2009?

「文章は続けてください」という言葉を真に受けて始めた好きなことを書くブログ。

観た映画の事などを書いていましたが、あんまり覚えていません…。

あるインディペンデント映画の感想を書いたら監督からコメントを頂けて嬉しかった記憶があります。

タイトルは取るに足らないという意味のsweet fanny adamsという慣用句から。

 

「猟奇グラインドコア」2009?-2015

やっていることは基本的に変わらず、観た映画や読んだ漫画、音楽や本、見に行った展示の感想を書いた雑多なブログ。基本的には「好きなことを書く」というもの。

2011年に人形趣味が再燃したので人形の話が出てきますが、りーぬを身請けしたことにより趣味嗜好に頑張らなくてよくなったと更新終了宣言をしました。

タイトルの所為かグランドコア好きの方からフォローされていました。男性の読者が多かった気がしますが、最近になってかなり好いてくれた女性がいたのが発覚しました。

今でもログが現存しています。

タイトルは私が好きなものは大体「猟奇」でくくれると思っていたのと、好きな音楽のジャンル「グラインドコア」を足したもの。あと当時の友人に「君は存在がグラインドコア」と云われたのも理由でした。

初期は「猟奇娘グラインドコア」でした。娘って歳でもないので途中で外しました。

 

「衛生ゴアグラインド」2017-

人形ブログのはずが、雑多なのは相変わらず。しかし、猟奇グラインドコアの頃よりも過剰さ減、精度は上がって、ポジティブな感じになっています。

タイトルは音楽ジャンルから。グランドコアをさらに残虐にしたゴアグラインドに衛生と付いたら相反して面白いかなと思ったのとこれ以外に思いつかなかったため。

よそ様の人形ブログはもう少しキラキラしていたり、耽美だったりしますが、私がそうしたタイトルでブログをやっていくのに抵抗があったので自分が抵抗がなくて前より素敵なタイトル…と思ったらこうなりました。

恐怖を楽しめるのには理由がある『恐怖の構造』『恐怖の作法』

読んだ本とそこから思い出した以前読んだ本の話。

恐怖の構造 (幻冬舎新書)

恐怖の構造 (幻冬舎新書)

 

読了。

ホラー小説家が恐怖について語った新書。今好きな作家だからというのもあるけど面白かった。

前々から云っている「キチガイは好きだけど変態はちょっと…」という理由についても詳しい。

それによると

変態→過剰な自己愛。自分の趣味嗜好から欠点、弱さを容認し、それを強要してくる。自己改革やタフネスとは無縁の理不尽な押し付けをしてくる。大衆ができるけどやらないことをする。

狂人→自分の望むことについてはなりふり構わず突き進み、自分の弱さも含めた障害になるものととことん戦い、己を克服する。大衆ができないことをする。

…という振り分けになっています。

前に変態はすがってくる感じと云っていたけど、こういうことか~。

 

スプラッターがある映画は好きだけど、スプラッター映画は好きじゃないという話や、ホラー小説創作論も楽しいし、そりゃそうだわなーと思うなど。平山夢明作品のタイトルが魅力的な理由も感じられます。

ホラー小説志願者に送るアドバイスで「書き手自身がどんなアンテナを張って何に気づくか」とあるけど、日々を楽しく生きるのだってそうだと思うよ。面白いことはそうそう降ってこないんだから、自分で感じ取るしかないと思っていますよ。

 

恐怖の作法: ホラー映画の技術

恐怖の作法: ホラー映画の技術

 

同じ恐怖について語った本でこちらを思い出した。

ホラー脚本家による恐怖についての本。

自身の作品及び手法、ネットにおける怪談について、ホラー飽きたといいながらも脚本のべからず集を掲載するなど作り手なら参考になりそうな話がどさっと。扱われるホラーがファンダメンタルなホラーなのですが、著者の好みは私の好みとズレるので、好きだから楽しいというよりはプロの理論的な話が読めたので収穫があったなぁという具合。

襲撃者の昼『首狩の宗教民族学』

読書は娯楽なので、自分の興味がある本を読むようにしています。

首狩の宗教民族学

首狩の宗教民族学

 

読了。

首狩について東南アジア、台湾を中心に書いた本。

統治時代に研究がされたこともあるからか、台湾の章が充実している。

タブー視される歴史だったからか、初めて知ることも多かったです。

豊穣を祈って、成人の儀式として、モテたくてなど首を狩る理由は様々あり、狩った首はどうしたのか、首を狩るルールや、首狩に関しての現地での言い伝えも多数紹介。動物の首だと喜ばなかった少女が人間の首をもってきたら大喜びって、もうサロメかそれ以上の話もありました。

 

モンド趣味丸出しで読みましたが、真面目な読み物でしたし、丁寧だったので好感度が高い本でした。

あと、最後に大戦時の日本人の首の話をもってきて、自分と地続きに感じがする構成も個人的に良いと思いました。

 

タブー視される台湾の首狩ではあるものの、「過去を克服する、過去の傷をいやす」「(首狩の現在の認識は)文化内で有していた重要な意義をないがしろ」にしているなど研究者の指摘のもと捉えなおされているという向きは負の歴史扱いのものと向き合うという今後の例になるのかしら?被害者がいると難しいことではあるものの、何らかの気持ちの折り合いが付けられたらとは思います。