衛生ゴアグラインド

本、人形、素体

絶妙な匙加減『人形たちの白昼夢』

人形モチーフの小説に手を出すなど。

人形たちの白昼夢

人形たちの白昼夢

 

 読了。

人形と青いリボンが出てくる短編集。モチーフが好きなものにつき地雷を踏み抜かれる覚悟だったけど、読んだら絶妙な話の方が多かった。

掘り出し物感。

ポットが語る少女の話「ワンフォーミー・ワンフォーユー」、読書好きの少女と少年の話「モンデンキント」が良かった。

全ての話において、人形が重要な役割を果たすかというとそうでもないのだけど、本としての統一感が出ている。

人形がかなり出張ってくるのはオートマトンが出てくる「リューズ」「ロゼッタ」という2作品。どちらも幻想寄りのリチャード・コールダーという印象。

 

小説で人形を使うときは距離感があった方が私は好き。特にその人形が球体関節人形だと作者の思い入れがあり過ぎると、ものすごい臭みが出るし、説明が多かったり長すぎたりして、げんなりすることの方が多いので、人形モチーフは地雷として扱っています。

そしてまた新たな価値観が生まれる『裸はいつから恥ずかしくなったか』

史学系の本を読んで発見があると嬉しいなぁ。

読了。

 

男女混浴の「下田の公衆浴場」という図版を検証することから始まる日本における裸体の近代史。 裸体が不道徳になり、現在の価値観が形成されるまでの歴史。この価値観が形成される前とされた後の性的な話にも触れているのですが、こうして変態が出来たのか…と思う部分も。

 

 

裸が珍しくなかった江戸の人はシチュエーションや性器そのものに性的な興奮を覚えるという話が出ていました(ただしここは他の人の著書の引用)。

春画に子供が出てくるシチュエーションがあるのは知っていたのですが、これを知ったときに「インモラルすぎないか?」と思ったのですが、その辺も興奮する要素だったようです。

 

裸が恥ずかしくなったのは外国人が好奇な目でみてくるから、後に政府が取り締まったからですが、取り締まったら今度は下着泥棒や覗きなど、変態的な性欲が出てくるなど、思わぬ所で日本の変態の歴史を感じました。

 

一方で裸が恥ずかしくなってしまった明治以降の話で、黒田清輝の裸体画の下半身部分に布をかけて展示した話がありました。ここ最近でも同じような処置をされて展示された作品があったので、この国はあと何年経てば裸とうまく付き合えるようになるんだろう?と思うなど。

隠しているから観たいのであり、隠れているからエロになってしまう…上手くいかないものですね。

 

おまけ

 

f:id:hikimusubi:20180904102349j:plain

うっかり裸で出歩いたら警察にお仕置きされてしまった男性の図。

「ごめんなさい、ごめんなさい」と警察に謝る男性が不憫ですが、こういうのたまにフェティッシュバーでみかけるやつーってなってしまいました。

復讐に至るは病『しつこさの精神病理 江戸の仇をアラスカで討つ人』

困ったときは春日武彦の本を読む。

読了。

しつこさをテーマにした新書。もともとは連載なので軽い調子で読めます。

復讐のために進路を選び同級生を同窓会で皆殺しにする計画を立てた犯人の話が一番印象に残ったかな…私も根に持つ方だけどそこまではしないな…。

 

春日武彦の本は自身の診察の話、実際の事件、こういう文学作品があって…という話が展開するのですが、その中で紹介された本で面白そうな本は読書メーターなどに登録しています。ただ、だいたい内容は忘れがちなのですが、この本を読んだらなんで読んだか不明だった本が春日武彦きっかけだったのに気が付きました。

 

晩年

晩年

 

昨年読んだのですが、なんで読んだか思い出せなかった。

この本を何で読む本リストにあったのかよくわからない。読書メーターにも感想がないので思い出せなかったが、「味の清六」という話が『しつこさ~』で紹介されていたので、春日武彦きっかけだったのかと思った。

 

 

普段目にしないものを見せてくれる『Satellite of LOVE』『着倒れ方丈記』

都築響一さんの本を読むとなんだか元気になるので、読みました。

Satellite of LOVE―ラブホテル・消えゆく愛の空間学 (ストリートデザインファイル)

Satellite of LOVE―ラブホテル・消えゆく愛の空間学 (ストリートデザインファイル)

 

こちらはラブホテルの内装写真集。

滑り台がある、回転ベッドがある、SMプレイルームがある、遊郭風になっている…など盛りだくさん。

SMプレイルームに道具が充実、手ぶらでも安心とあり、くすっと笑ってしまうなど。

こういう言葉のセンス、すきー。

 

着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS
 

1つの洋服ブランドのコレクターの方たちのコレクションとその部屋を紹介した写真集。

私も知っているブランドがいくつかあって、ジェーン・マープルのコレクターさん、BABYの店員さんの部屋にそれぞれ人形がいたのに気が付いて「やっぱり親和性あるよね~」と思うなど。

冒頭の文章でこの企画にブランドは協力しないどころか、文句を云うし抗議もあったという記述があった。ファッション・ビジネスの世界は「顧客を恥ずかしがり、自分たちが作る幻想の世界を大切にしようとする」のだけど、顧客を恥ずかしがる商売が上手くいくんだろうか?…今のファッション業界、あんまりうまくいっていないよね?と思うなど。

カニバリズム『息子ジェフリー・ダーマーとの日々』、ネクロフィリア『死体と暮らすひとりの部屋』

私が知っている無駄知識が誰かの役に立つことがある。

しかし、誰かの役に立つことを求めて読書をしているわけではないので、今後も好き勝手に本を読みます。

 

息子ジェフリー・ダーマーとの日々

息子ジェフリー・ダーマーとの日々

 

カニバリズム猟奇殺人でお馴染みジェフリー・ダーマーの父による手記。

ダーマー親子はそれぞれちょっとした、そしてあまり特別ではない先天的な疾患がある気がする。それを生きているうちにどう折り合いをつけたかが違うだけなのかもしれない。

この本は最後は「これから父親になろうとしている人たちにも次のように言うしかない。『気をつけて、しっかり頑張ってほしい』と。」という言葉で終わっていた。

 

 

死体と暮らすひとりの部屋―ある連続殺人者の深層

死体と暮らすひとりの部屋―ある連続殺人者の深層

 

イギリスのシリアルキラー:デニス・ニルセンに関する本。

寂しがり屋で自己愛の人で死体愛好癖、複雑な性的嗜好で折り合いをつけられず犯罪に走ってしまったという印象。

もちろん殺しはよくないのですが、処理法が雑でびっくりした。燃やすときにゴムと一緒に燃やすことをした以外は、隠し方や処理が雑でよく長年捕まらなかったなぁ…って思った。

排水溝に死体を詰まらせてしまったがばっかりに犯行がばれたので、この本を読んだときは思いたってキッチンの排水溝を掃除していました。

現実対虚構『倒立する塔の殺人』

なかなか良い感じに読書がはかどっております。

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

 

読了

戦中~終戦のミッションスクールを舞台に女学生たちの愛憎渦巻くミステリー。

謎解きの部分よりも女学生たちのキャラクターや関係性の方が楽しかったです。

耽美さもあるけど、普通の女子がいるのもいい。

主に出てくる人物が美少女、美少女、細身で病弱な美少女という感じですが、主人公は丈夫そうで傍から見たらぼんやりしている普通の女子だし、ミッション系の学校にいるのにまったくおしゃれさがなくてだらしなくてウザイ感じのコもいる。

そして、全編を通して出てくるだらしなくてウザいコの印象が終盤で変わるのもよかったです。終盤ですごく可愛げが出てくる不思議な人物でした。

 

ミステリーなので終盤で謎が明かされるのですが、ある人物とある人物の関係が「力では勝てそうな小さい相手に傅く」だったので、思わぬところでグッときました。

沙村広明の漫画で小柄な女子が大柄な男を従えているようなのが好きなのです。残念ながら、私は自分よりも大きなものに傅いてもらえないので、もっぱら人形に甘い人になっています。

私がだるまちゃんじゃなくなっても『未来のだるまちゃんへ』

後から知ることは多かれども、少しはあっているとなんだかうれしい。 

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)

 

読了。

かこさとしの自叙伝。

少年期の思い出や出来事、昭和20年以降を余生とし、子供たちのために生きようと思い生きた話が盛りだくさん。

先日行った「かこさとしのひみつ展」きっかけで読んだのですが、展示の補足にもなる内容でした。 『からすのパン屋さん』で意識したことに「多様」とあって、だるまちゃんのお友達が自分と違う姿のお友達ばかりなのは多様性にもつながるのかな…と思ったけど、だいたいあっていたかな?

 

少年期の思い出で、おとうさんが色々買ってくれたけど、「ソウジャナイ!」と思ったり、トラブルが起きてしまったりして気まずかった話が出てくるのですが、『だるまちゃんとてんぐちゃん』で、だるまちゃんがてんぐちゃんに憧れて帽子が欲しい、靴が欲しいとだるまどん(だるまちゃんのお父さん)にねだると色々出してくれるけど「ちがうんだよなぁ」「そうじゃない!」となるのはこの体験からなんだなぁ…と思うなど。

そのほかにも取材は資料を読み込んで一番最後にする、戦争の話を書きたいと思っているなど作者の考えていることを知れる読書でした。